US Navy /アメリカ海軍
ご紹介しているモデル
海防戦艦:2クラス
前弩級戦艦:3クラス
準弩級戦艦:3クラス
弩級戦艦:4クラス
超弩級戦艦:7クラス(未成1クラスを含む)
新戦艦:8クラス(未成3クラス、架空2クラスを含む)
Pre-Dreadnought /Semi-Dreadnought Era
大西洋における英独の建艦競争、太平洋における日露の建艦競争、両方の刺激を受けて、アメリカ海軍は多くの戦艦を結果的に建造する。その結果、ドレッドノートの就役時には、世界第2位の海軍力に到達する。
武装と防御力に重点が置かれ、速力はやや抑えられる傾向があった。
Indiana-class battleship - Wikipedia
(1895-, 10288t, 15knot, 13in* 2:2, 3 ships)
アメリカ海軍が建造した初の本格的戦艦であった。
主砲として33センチ砲を連装砲塔2基に収め、副砲として20.3センチ砲をこちらも連装砲塔4基に配置した重武装艦である。一方、速力は15ノットに甘んじ、乾舷が低く、荒天時には主砲は使えない恐れがあった。
(1897-, 11348t, 17knot, 12in *2*2)
前級インディアナ級の改良型。主砲口径を30.3センチに抑え、配置位置を高くし、航洋性を向上させた。速力16ノット。
近代戦艦:前弩級戦艦 pre-Dreadnought battleship
Kearsarge-class battleship - Wikipedia
(1900-, 11540t, 16knot, 13in *2*2 & 8in *2:2, 2 ships)
インディアナ級戦艦と同様、重武装を目指す。33センチ砲を主砲とし副砲をその上部に同様の砲塔形式で搭載すれば、副砲塔の数を減らしながらも両舷への砲力を減殺せずに済む、との発想から、設計された。親子砲塔という特異な形状を持っている。
発想は卓抜であったが、射撃時に主砲・副砲双方の爆風が干渉し、実用面では命中精度の低下など、不具合が生じた。
Illinois-class battleship - Wikipedia
(1900-, 12250t, 16knot, 13in *2*2, 3 ships)
33センチ主砲を収めた主砲塔の前面形状に傾斜を持たせ、耐弾性を高めた。親子砲塔を廃止し、船首楼を復活し航洋性を高めた。
Maine-class battleship - Wikipedia
(1902-, 12846t, 18knot, 12in *2*2, 3 ships)
ロシアから受注したレトヴィザンを参考とし、速力を列強と同等の18ノットとし、主砲も列強と同じく40口径30.5センチ砲を採用した。この砲は従来の35口径33センチ方よりも初速が速く、有効射程、命中精度共に高い。同様に副砲も50口径15.2センチ砲が採用され、総合的な砲力が強化された。
強化型近代戦艦:準弩級戦艦 semi-Dreadnought battleship
Virginia-class battleship - Wikipedia
(1906-, 14948t, 19knot, 12in *2*2 & 8in *2*4, 5 ships)
20.3センチ連装砲4基を中間砲として装備した強化型近代戦艦(準弩級戦艦)である。中間砲の搭載形式として再び親子砲塔を採用した。機関が強化され、速力は19ノットを発揮した。
Connecticut-class battleship - Wikipedia
(1906-, 16000t, 18knot, 12in *2*2 & 8in *2*4, 6 ships)
前級ヴァージニア級の改良型で、主砲・中間砲の口径はそのままとし、副砲の口径が15.2センチから17.8センチに強化された。艦型は大型化したが、機関出力を抑え、速力を18ノットで我慢した。
Mississippi-class battleship - Wikipedia
(1908-, 13000t, 17knot, 12in *2*2 & 8in *2*4, 2 ships)
艦型を小型化し建造経費を抑える思想で建造された。速力も17ノットに甘んじざるを得ず、あまり評判は芳しくなかった。就役時には既にドレッドノートが就役しており、いわゆる旧式新造艦となってしまった。
Dreadnought /Super-Dreadnought Era (around WW1)
米西戦争以降、海軍力の充実に力を入れたアメリカ海軍は、第一次大戦開戦時には弩級戦艦8隻、超弩級戦艦2隻を保有する、英独に次ぐ海軍に成長していた。特にその主砲配置には先進性があり、早い時期から背負い式砲塔の配置などを導入し、首尾線上に主砲塔を配置し、合理的な射線確保を追求していた。
一方、速力に関しては一貫して21ノットを貫いた。
開戦後も超弩級戦艦を次々に建造し、大戦終了時には、英海軍に次ぐ強大な戦力を保有していた。
弩級戦艦 Dreadnought battleship
South Carolina-class battleship - Wikipedia
(1910-, 16,000t, 19nkot, 12in *2*4, 2 ships)(113mm in 1:1250)
米海軍初の弩級戦艦。主砲塔は全て首尾線上に配置され、世界に先駆けて背負い式配置を採用し、両舷への射界を確保している。やや低速であった。
Delaware-class battleship - Wikipedia
(1910-, 20,380t, 21knot, 12in *2*5, 2 ships)(127mm in 1:1250)
前級より主砲塔を1基増やして、主砲10門の搭載艦とした。速力は21ノットとし、以降、この速力が米戦艦の標準となる。
Florida-class battleship - Wikipedia
(1911-, 21,825t, 20.8knot,12in *2*5, 2 ships)(125mm in 1:1250)
基本設計は前級に倣い、副砲を2問増やし強化した。後部篭マストと後部煙突の位置を逆転している。
Wyoming-class battleship - Wikipedia
(1912-, 27,243t, 20.5knot, 12in *2*6, 2 ships)(137mm in 1:1250)
連装主砲塔を1基追加し、主砲12門を搭載する艦となった。
超弩級戦艦 Super-Dreadnought battleship
New York-class battleship - Wikipedia
(1914-, 27,000t, 21knot, 16in *2*5, 2 ships)
主砲を35.6センチ砲とした初の超弩級戦艦である。連装砲塔5基10門を搭載している。
Nevada-class battleship - Wikipedia
(1916-, 27,500t, 20.5knot, 14in *3*2 + 14in *2*2, 2 ships)(142mm in 1:1250)
前級に倣い35.6センチ主砲を、初めて採用した三連装砲塔2基、連装砲塔2基を、それぞれ艦の前後に 背負式に配置した。以降、この砲塔配置は、アメリカ戦艦の標準的な配置となる。
第一次改装(1927-29)
射撃システムの更新に伴い、艦橋構造を三脚式に改められ、射撃方位盤室がそれぞれの頂上に設けられた。
最終改装時(1942)
舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装した。
Pennsylvania-class battleship - Wikipedia
(1916, 31,400t, 21knot, 14in *3*4, 2 ships)(147mm in 1:1250)
主砲塔を全て三連装とし、12門の主砲をコンパクトに搭載した。この艦以降、機関はタービンとなった。
第一次改装(1927-29)
射撃システムの更新に伴い、艦橋構造を三脚式に改められ、射撃方位盤室がそれぞれの頂上に設けられた。
最終改装時(1942)
舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装した。
New Mexico-class battleship - Wikipedia
(1918-, 32,000t, 21knot, 14in L50 *3*4, 3 ships)(152mm in 1:1250)
主砲を50口径に強化し、新設計の主砲塔を採用した。艦首の形状をクリッパー形式とした。ニューメキシコ のみ、電気推進式タービンを採用した。
第一次改装(1931-33)
射撃システムの更新に伴い、艦橋構造を塔構造に改められた。これは同時に遠方からの視認性を低める効果を狙ったともされている。
Tennessee-class battleship - Wikipedia
(1919-, 32,600t, 21knot, 14in L50*3*4,2 ships)(152mm in 1:1250)
ニューメキシコ 級の改良型で、艦橋と射撃式装置を拡充した。機関には電気推進式タービンを採用した。
最終改装時(1942)
舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装した。
(1921-, 32,600t, 21knot, 16in *2*4, 3 ships, 152mm in 1:1250 by Navis)
米海軍は、日本海軍の長門級建造の詳報を得ると、テネシー級改良型として建造する予定であったコロラド級戦艦の搭載砲を急遽16インチ砲に変更し建造した。上記仕様に明らかなように主砲口径を長門級に同等にした以外は、速力、装甲の厚さなどの防御力は基本仕様はテネシー級と変わらず14インチ砲搭載艦と同等のままであり、特に速力においては劣速が顕著だった。
最終改装時(1942)
舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装した。
ケンタッキー(サウスダコタ1920)級戦艦 - Wikipedia
前級のコロラド級戦艦は、既述のように日本海軍の長門級が16インチ砲を搭載しているという情報に基づき、本来はテネシー級の改良型として建14インチ砲搭載艦として建造される予定であった。その為、備砲のみ16インチでその防御は16インチ砲に対するものではなかった。
従って、ケンタッキー級は、初めて当初から16インチ砲を搭載することを念頭に設計された戦艦であった。パナマ運河航行を考慮して、艦型に大きな変化を与えず、従来のいわゆる米海軍の標準的戦艦の設計を踏襲した上で、機関、備砲(16インチ12門)と16インチ砲に見合う防御を兼ね備えた艦となった。備砲と防御はもちろん最強であったが、あわせて速力もこれまでの米戦艦を上回るものであった。
とはいえ、日本海軍の同時期の戦艦には大きく劣り、実戦となった場合には、このことは相当の不利に働くことになる。
(42,000t, 23knot, 16in *3*4, 3 ships, 176mm in 1:1250 by Superior)
ケンタッキー級、コンステレーション級の近代化改装モデルの到着
本稿第22回でご紹介した通り、日米両海軍は、太平洋を挟んだ緊張の中で、新戦艦の建造と併せて、保有する既存戦艦各級の近代化改装を、数次にわたって行なった。
既存戦艦としては最も最後に建造されたケンタッキー級(史実ではサウスダコタ1920級として知られている)、コンステレーション級(史実ではレキシントン級として知られている。同級のレキシントンとサラトガは、航空母艦として建造された)についても、同様の対応がとられ、その外観が一変した。
その改装の目的は、他の既存艦に対する改装同様、射撃システムの一新への対応と副砲を廃し対空・対艦両用砲への変更やその他の対空火器の強化、防御力強化等に置かれていた。
これも第22回でご案内した通り、両級は未成艦であるため新造時の模型は製造されていたが、近代化改装後の模型までは存在せず、筆者は、ごく最近になって両級の近代化改装後の3Dプリンティングモデルを発見し、その製作者Tiny Thingajigsに発注をかけ、模型の到着を心待ちにしていた。
直下の写真が到着した未塗装の模型である。
今回、筆者は、比較的柔らかい樹脂であるWhite Natural Versatile Plasticという素材でのプリントアウトを依頼した。柔らかい素材である分、ややフォルムが甘く、もし原型に忠実なシャープな模型を期待する場合には、Smooth Fine Detail Plasticという素材で製作依頼をした方が良いかもしれない。ただし、その場合には、約2.3倍の費用を覚悟する必要があるのでご注意を。
(直上の写真は、到着時の両モデル。上:ケンタッキー級(サウスダコタ1920級)、下:コンステレーション級(レキシントン級)
ケンタッキー級(サウスダコタ1920級)近代化改装後
他級の近代化改装同様、射撃システムの変更、副砲撤去、両用砲を砲塔形式で装備、上部構造物の一新、等々で、艦様は新造時と全く異なる、文字通り近代化された様相となった。
(直上の写真は、ケンタッキー級の新造時(上)と最終改装後(下)の艦様の比較)
(直上の写真は、いずれも近代化改装後の既存戦艦各級の比較。右下から、ネバダ級、テネシー級、ケンタッキー級。上部構造物の配置と、その周辺の対空火器の強化が興味深い。さらに、米海軍としては初めて設計当初から16インチ主砲搭載艦として設計されたケンタッキー級の大きさがよくわかる)
超弩級巡洋戦艦(未成艦のみ)Super-Dreadnought battlecruiser
コンステレーション級(レキシントン級)巡洋戦艦 - Wikipedia
同級のうちレキシントン、サラトガは航空母艦に転用建造され、コンステレーションとコンスティチューションの2隻が建造された。
米海軍はこれまで巡洋戦艦を建造せず、米海軍初の巡洋戦艦となった。
それまで、米海軍の主力艦は21ノットの戦隊速度を頑なに守っており、高速艦で揃えられた日本艦隊、あるいは英海軍のクイーン・エリザベス級、レナウン級、アドミラル級などの高速艦隊に対抗する術を持たなかった。これを補うべく設計された同級であったが、当初の設計では、備砲(16インチ8門)と速力は強力ながら(当初設計では33.3ノット)、その装甲は極めて薄く、ユトランド沖海戦以降に、防御に対策を施した諸列強の高速艦には十分に対抗できるものではなかった。
この為、装甲の強化を中心とした防御力に対する見直しが行われ、代わりに速力を30ノットに抑える、という設計変更が行われた。
(42,000t, 30knot, 16in *2*4, 2 ships, 213mm in 1:1250 by Hai)
同級もケンタッキー級に準じた、射撃システムの変更、副砲撤去、両用砲を砲塔形式で装備、上部構造物の一新、等々で目での近代化改装を受け、艦様が一変した。
特に、外観上での米海軍主力艦の特徴の一つであった艦上部構造の前後に佇立する篭マストが、塔状の構造物に置き換えられた。
(直上の写真:舷側に迷彩塗装を施してみた)
(直上の写真は、コンステレーション級の新造時(上)と最終改装後(下)の艦用の比較)
レキシントン級巡洋戦艦は、ダニエルズプランで建造に着手された、米海軍初の巡洋戦艦の艦級です。元々、米海軍は、戦艦の高速化には淡白で、21ノットを標準速度としてかたくなに固守しつづけ、巡洋戦艦には触手延ばしてきませんでした。
しかし本稿でも既述のとおり、第一次世界大戦の英独両海軍主力艦による「ドッカー・バンク海戦」や「ユトランド沖海戦」の戦訓から、機動性に劣る艦隊は決戦において戦力化することは難しいという情況が露見し、米海軍も遅ればせながら(と敢えて言っておきます)高速艦(巡洋戦艦)の設計に着手した、というわけです。
(背景情報は下記を)
レキシントン級巡洋戦艦の設計当初のオリジナル・デザインでは、34300トンの船体に、当時、米海軍主力艦の標準主砲口径だった14インチ砲を、3連装砲塔と連装砲塔を背負式で艦首部と艦尾部に搭載し、35ノットの速力を発揮する設計でした。
その外観的な特徴は、なんと言ってもその高速力を生み出す巨大な機関から生じる7本煙突という構造でしょう。
モデルは、Masters of Miitaly社製で、White Natural Versatile Plasticでの出力を依頼していました。
(直下の写真は、到着したレキシントン級巡洋戦艦のモデル概観。Masters of Miitaly社製。素材はWhite Natural Versatile Plastic)
本稿で行った「レキシントン級デザイン人気投票」では、「籠マスト+巨大集合煙突デザイン」に継ぎ第二位という結果で、私も大変気になりながらも、14インチ砲搭載艦というところに少し引っかかりがあり(あまりたいした理由はないのですが、この巨体なら16インチ砲だろう、という思いが強く)、なかなか手を出していなかったのですが、この人気投票に背中を押してもらった感じです。ありがたいことです。(なんでも都合よく解釈できる、この性格もありがたい)
と言うわけで、今回はその完成形のご紹介です。
モデルは非常にバランスの取れたスッキリとしたプロポーションを示しています。どこか手を入れるとしたら、当時の米主力艦の特徴である「籠マスト」をもう少しリアルな感じに、かなあ、とは思いますが、今回は手を入れずに仕上げることにしました。
なんかいいアイディアあれば、是非お聞かせください。
上記のように、同級の原案設計の当時には、米海軍の主力艦標準備砲ということで14インチ砲搭載の予定だったのですが、その後、日本の八八艦隊計画が「全て16インチ砲搭載艦で主力艦を揃える」という設計であることを知り、急遽16インチ砲搭載に設計変更した、という経緯があったようです。
こうして同級は、結局16インチ砲搭載の巡洋戦艦として着工されるのですが、その後、ワシントン軍縮条約で制約、整理の対象となり、同級のうち2隻がその高速性と長大な艦形を活かして大型の艦隊空母として完成されました。「レキシントン」と「サラトガ」ですね。
つまり巡洋戦艦としては、同級はいわゆる「未成艦」に分類されるわけですが、その「未成」故に、完成時の姿を想像することは、大変楽しいことです。
筆者もご他聞に漏れず想像の羽を伸ばしたがるタイプですので、今回の「オリジナル・デザイン案」の完成に勢いづいて、筆者の想定するバリエーションの完結を目指してみました。
肝は「煙突」かな?
バリエーション1:二本煙突シリーズ
竣工時:籠マスト+二本煙突
上記リンクにあるように、実際に16インチ砲搭載巡洋戦艦として起工されたものが、完成していたら、と言う想定ですね。(こちらは本稿でも既にご紹介しています)
起工当時の米主力艦の標準デザインであった籠マストと、さすがに7本煙突という嬉しいほどユニークではあるけれど何かと問題のありそうなデザインは、実現しなかったんだろうなあ、と、その合理性には一定の納得感がありながら、一方では若干の落胆の混じる(かなり正直なところ)デザインですね。(アメリカの兵器は時として、量産性や合理性にともすれば走り、デザインは置き去りになったりします。あくまで筆者の好みですが、「デザイン置き去り」が、「無骨さ」として前に出るときは、言葉にできないような「バランス感の無さ」につながり、それはそれで「大好き」なのですが(M3グラント戦車、M4シャーマン、F4Fワイルドキャット、ニューオーリンズ級重巡洋艦等がこれに当たるかなあ)、正直今回の「レキシントン・二本煙突デザイン」これは「味気なさ」が先に立つと言うか・・・)
(42,000t, 30knot, 16in *2*4, 2 ships, 213mm in 1:1250 by Delphin :こちらはDelphin社のモデルに少しだけ色を入れた程度です)
最終改装時:塔状艦橋+二本煙突
同級の近代化改装後の姿で、米海軍が主力艦に対し行なった、射撃システムの変更、副砲撤去、両用砲を砲塔形式で装備、上部構造物の一新、等々を実施、と言う想定です。艦様が一変してしまいました。
特に、外観上での米海軍主力艦の特徴の一つであった艦上部構造の前後に佇立する篭マストが、塔状の構造物に置き換えられました。
(直上の写真:舷側に迷彩塗装を施しています。筆者のオリジナルですので、ご容赦を。本級は未成艦であるため新造時の模型は製造されていましたが、近代化改装後の模型までは存在せず、ごく最近になって近代化改装後の3Dプリンティングモデルを発見し、その製作者Tiny Thingajigsに発注をかけ、模型の到着を心待ちにしていました。ベースとなったモデルはこちら)
(直上の写真は、上)と最終改装後(下)の艦様の比較)
バリエーション2:巨大集合煙突シリーズ(こちらは筆者の妄想デザインです)
竣工時:籠マスト+巨大集合煙突
そもそも発端は、ワシントン・ロンドン体制で、巡洋戦艦から空母に転用された「レキシントン」の巨大な煙突からの妄想でした。
この煙突がついている主力艦は、どんな感じだったろうか、作っちゃおうか、という訳です。で、その巨大な煙突の背景には大きな機関があり、元々は7本の煙突が初期の設計段階では予定されていたことを知る訳です。おそらくは転用されたのが「空母」なので、高く排気を誘導する必要があったんでしょうが、まあ、今回はそれはそれで少し置いておきましょう。
完成後に改めて見ると、ああ、半分くらいの高さ、と言うデザインもあったなあ、と。(うう、こんな事に気が付いてしまうと、いつか手を付けるんだろうなあ)
直上の写真は、今回急遽製作した竣工時の「レキシントン級巡洋戦艦」で、籠マストと「レキシントン級」空母譲りの巨大集合煙突が特徴です。
本稿でも以前ご紹介しましたが、本来は下記のTiny Thingajigs製の3D Printing Modelをベースに制作する予定だったのです。
しかしShapeways側のデータ不備とかの理由で入手できず、この計画が頓挫。では、ということで、ebay等で、これも前出のDelphin社製のダイキャストモデルを新たに入手しそれを改造しようかと計画変更。しかし少し古いレアモデルだけに新たに入手が叶わず(ebayで、格好の出品を発見。入札するも、落札できず:ebayは1:1250スケールの艦船モデルの場合、当然ですが多くがヨーロッパの出品者で、終了時間が日本時間の明け方であることが多く、寝るまでは最高入札者だったのに、目が覚めると「ダメだった」というケースが多いのです)、結局、手持ちのDelphinモデルをつぶす事にしました。(つまり、これ↓を潰す事に・・・)
Delphin社のモデルは、こうした改造にはうってつけで、パーツが構造化されており、その構造が比較的把握しやすいのです。従って、少し注意深く作業をすればかなりきれいに分解することができます。今回は上部構造のうち、前後の煙突部と中央のボート甲板を外し、少し整形したのち、Deagostini社の空母「サラトガ」の完成模型(プラスティックとダイキャストのハイブリッドモデル)から拝借した巨大な集合煙突(プラスティック製)を装着する、という作業を行いました。
で、出来上がりがこちら。設計の合理性は爪の先ほども感じませんが、なんかいいなあ、と自画自賛。この巨大な煙突は格好の標的になるでしょうから、まず、この設計案は採用されないでしょうねえ。
或いは、上掲の2本煙突デザインでは、7本煙突からこのデザインへの変更の際には機関そのものの見直しが必須のように思うのですが、それが何らかの要因で困難だった(あまりに時間がかかる、とか、費用が膨れ上がる、或いは新型の機関を搭載するには一から設計し直したほうが早い、とか)というような状況で、ともあれ完成を早めた、というような条件なら、有りかもしれませんね。
(やっぱり、煙突の高さ、半分でも良かったかもしれません。ああ、気になってきた!)
最終改装時:塔状艦橋+巨大集合煙突
そして、巨大集合煙突のまま、近代化改装が行われます。米海軍が主力艦に対し行なった、射撃システムの変更、副砲撤去、両用砲をこの場合には単装砲架で装備、上部構造物の一新、等々の近代化改装を受けた後の姿、と言う想定です。
この場合でも、やはり篭マストが、塔状の構造物に置き換えられました。煙突の中央に太い縦線が入れられ、2本煙突への偽装が施されています。
こちらは下記の3Dプリンティングモデルをベースとしています。
このモデルの煙突をゴリゴリと除去し、Deagostini社の空母「サラトガ」の完成模型(プラスティックとダイキャストのハイブリッドモデル)から拝借した巨大な集合煙突(プラスティック製)を移植したものが、下の写真です。
この後、下地処理をして、少し手を加え塗装を施し完成です。
(直下の写真は、巨大煙突デザインの竣工時(上)と最終改装時(下)の艦様の比較)
上から・・・もう説明はいいですかね。
こうやって一覧すると、「どれが好きですか?」と聞きたくなるのですが・・・。また、アンケートかよ、という声が聞こえてきそうなので、今回はやめておきます。
(そのうち、もう一回、巨大集合煙突の高さ、ちょっと変えてみました、なんて紹介をするかもしれませんね。きっとするなあ、これは)
ということで、アップデート。つまり煙突高のヴァリエーション。
バリエーション2.5:修正巨大集合煙突シリーズv2
これまで上記には何度か「煙突の高さ、半分でもいいかも」という筆者の心の声が出てきています。では、この機会にやってしまえ、というのが「バリエーション2.5: 修正巨大集合煙突シリーズv2」です。
竣工時:籠マスト+巨大集合煙突
単純に煙突を60%くらいの高さに調節してみた、ということです。模型製作的には、煙突をゴリゴリ短く切断して換装する、と言って仕舞えば味気ない作業です。が、その効果の程は・・・。
(就役時の姿を想定したモデル:下の写真は、煙突の高さを修正した前と後の対比/修正前が上段。ちょっとなんとなく落ち着いた感じでしょうか?)
最終改装時:塔状艦橋+巨大集合煙突
基本的に使用した煙突の高さは、ほぼ前出の就役時と同じくらいに調整しました。
そして同じく、煙突高の調整前と後の対比。
(上段が調整前=空母「レキシントン」と同じ高さの煙突を使用/下段は調整後)
就役時、最終改装時、いずれも煙突の高さ修正後の方が、少し説得力が上がったような気がしませんか?この写真ではわからないけど、特に後ろからのカットを見ると・・・。
そして、一応、下の写真で、バリエーションの一覧を。
(上から原案(7本煙突)、二本煙突就役時、二本煙突近代化改装後、集合煙突就役時、集合煙突近代化改装後)
・・・と、これで気になっていた「煙突高」の調整問題が一応筆者の中では一段落。ああ、すっきりしました。
ともあれ、合理性はさておき、やはり巨大煙突、いいと思うんですがねえ。
米海軍の新型戦艦
米海軍はワシントン軍縮条約明けに向けて、これまでの標準的なアメリカ海軍の戦艦とは大きく異なる設計思想を持つ新型戦艦を設計した。
これまで、アメリカ海軍は、常に圧倒的な物量を展開することを念頭に、個艦の性能、速度などの優位性よりも、戦艦戦隊の戦闘単位としての威力に重点を置いた艦隊構想を持っていた。
しかし、ユトランド沖海戦の戦訓、さらには発展著しい航空機と新たなその運用戦術となるであろう航空母艦等との連携には、従来の速度では不十分であることが明らかとなり、新型戦艦はこれまでの標準速力を一新する、高速戦艦が俎上にあげられた。
さらに、この新型戦艦の搭載主砲には複数案あり、当初は14インチ主砲を四連装砲塔3基12門搭載艦の建造が予定された。しかし、日本海軍が条約明けに建造する艦が16インチ主砲を搭載することがほぼ確定した段階で、その4番艦、5番艦を16インチ主砲搭載艦として建造することになった。
都合、新型戦艦はメイン級(1938年 14インチ砲搭載) 2隻
改メイン級(1939年 14インチ砲搭載) 1隻
ノースカロライナ級(1941年 16インチ砲搭載) 2隻
サウスダコタ級(1942年 16インチ砲搭載) 4隻
の合計9隻が就役した。
メイン級戦艦
14インチ主砲搭載型の新型戦艦である。米海軍の戦艦として初めて27ノットの高速を発揮できる戦艦として設計された。14インチ主砲を四連装砲塔3基に搭載している。水平防御にも十分な配慮が施された設計となっている。
(1938: 35,500t, 27knot, 14in *4*3, 2ships, 177mm in 1:1250 by Hansa/Semi scratched)
(メイン級戦艦2隻:サウスカロライナ(手前)、メイン)
戦艦 バージニア(改メイン級戦艦)
メイン級の改良型として、建造された。メイン級の上部構造を合理化してより集中防御方式を徹底したコンパクトな上部構造を持つ設計とした。主砲はメイン級と同じ14インチ主砲を四連装砲塔3基に搭載している。設計当初は、日本海軍の新戦艦が16インチ主砲装備していても、同級で対処できるのではないかという見方もあったが、検討の結果、十分な防御を得られたとは判断されず、1隻のみの建造となった。後に建造されるサウスダコタ級戦艦の基本設計となった。
(1939: 35,500t, 27knot, 14in *4*3, 2ships, 165mm in 1:1250 by Hansa/Semi scratched)
日本海軍の新型戦艦が16インチ砲装備であるということが判明し、本来は改メイン級として建造される予定であった3番艦、4番艦(メイン級の4番艦、5番艦)の設計を急遽16インチ主砲装備艦として再設計した。このため、その防御力は14インチ主砲対応をその基本構想としていたため、やや防御力に課題を抱えた設計となってしまった。
(1941-: 36,600t, 27 knot, 16in *3*3, 2 ships, 178mm in 1:1250 by Neptun)
(ノースカロライナ級の2隻:ワシントン(手前)、ノースカロライナ)
当初から16インチ主砲搭載艦として設計され、ノースカロライナ級では課題の残った対16インチ砲防御を施した設計とした。さらに集中防御を徹底し、戦艦メインの防御配置を参考として、コンパクトな上部構造を実現した堅艦となった。
(1942-: 38,266t, 27 knot, 16in *3*3, 4 ships, 166mm in 1:1250 by Neptun)
(サウスダコタ級は4隻の同型感を有している。サウスダコタ(奥)、インディアナ、マサチューセッツ(手前)、アラバマ)
同級の就役で、米海軍は27ノットの高速戦艦を9隻保有し、そのうち16インチ主砲装備艦が6隻となったため、これらに従来からの標準戦艦戦隊の存在を考慮すれば、日本海軍の八九艦隊ならびにこれから建造される新型16インチ主砲搭載艦にも対抗できると考えらえたが、 やがて日本海軍の相模級戦艦が18インチ主砲装備艦であることが判明し、さらに就役しつつある新型戦艦も18インチ主砲搭載艦であることが判明し、さらなる対応を検討する必要性が浮上することになる。
再び模型的な妄想の時間-14インチ砲搭載新型戦艦の制作
既述のように「ノースカロライナ級」「サウスダコタ級」と米海軍の「新戦艦」時代を象徴する艦級を見てきたわけですが、「模型的視点」「コレクター視点」に立つと、実現されなかった14インチ砲搭載の新型戦艦というのはどのようなものだったのか、少し気になってきます。
もちろん既存のモデルがないわけではなく、さらに言うと図面等の資料も比較的簡単に目にすることができます。
(from wilipedia)
(from ALVANCO: BB1937XVI(12-14") Never-was SPR by Superior 1:1200 scale: 筆者もこのモデルを保有してはいるのですが、まずスケールが1:1200で、少し大柄であること、後の「ノースカロライナ級」の実艦との連携についての違和感(全く個人的な心象ですが)などで、今はコレクションに入れていません。やっぱりここでも「煙突」?)
http://www.alnavco.com/1200WW2.asp
ということで、「こんな感じ?」というのを制作してみました。結構落ち着いた感じ?ありそう?(ちょっと自画自賛ですが)
(14インチ砲搭載新型戦艦案の概観:178mm in 1:1250 )
ベースにはDelphin社製の「ノースカロライナ級」のモデルを利用し、特徴的な2本煙突を除去して3D printing製の集合煙突(何と日本海軍の「天城級」巡洋戦艦用!)に換装しています。上の図面に従い少し両用砲の数を6基に削減しています(他の対空兵装の配置をそのままにしたので、対空兵装強化時ということでそのまま10基装備にしても良かったんですが)。
主砲には四連装主砲塔が必要なのですが、手持ちが、仏海軍の「リシュリュー級」のものか、英海軍の「キング・ジョージ5世級」のものしかなく、14インチ砲ということを考慮すると、「リシュリュー級」のものでは大きすぎるということで、「キング・ジョージ5世級」(DeaGostini製のハイブリッドモデル)のものを拝借しています。
(下の写真は、14インチ搭載新型戦艦の特徴的な四連装砲塔と煙突部分の拡大 )
(下の写真は、「ノースカロライナ級」の実艦(奥)との比較:基本、「ノースカロライナ級」をベースに用いていますので、もちろんレイアウト等は変わりませんが、なんとなくこんな感じだったのかなあ、と。両用砲を2期減らした後が、ポツンと穴が空くので、対空機関砲座を置いてみました。ちょっと多すぎたかな?)
米海軍の新造戦艦
日本海軍の大和級の建造をめぐっては、その設計情報が巧みに隠蔽されたことにより、当初16インチ砲搭載維新戦艦との認識で米海軍は対応を検討した。
本稿前回で記述したノースカロライナ級、サウスダコタ級の戦艦がこれの該当する。さらにこの増強策として、アイオア級戦艦以下の4クラス、14隻が追加建造されることになる。
アイオア級(アイオア、ニュージャージー、ミズーリ、ウイスコンシン)
改アイオア級:イリノイ級(イリノイ、ネブラスカ、デラウェア、ジョージア)
モンタナ級(モンタナ、オハイオ、ニューハンプシャー、ルイジアナ)
アイオア級戦艦は、当初から空母機動部隊との帯同を前提に建造された高速戦艦である。
米海軍は、来るべき太平洋における艦隊決戦が、単に主力艦同士の砲撃戦のみではなく、その前哨戦として、発展著しい航空戦力の激突が起きることを想定していた。その
勝者がその制空権の元で有利に砲撃戦を展開できる。そのためには前哨戦を制せねばならず、同様の思考を展開すれば日本海軍はその空母機動部隊に、これと帯同しうる高い機動性を誇る金剛級、あるいは畝傍級、高千穂級 などの巡洋(高速)戦艦をその護衛としてつけるであろうと想定した。
しかしながら、米海軍には、同様の高機動性を備えた戦艦がなく、巡洋艦以下の護衛艦隊では、日本海軍の高速戦艦群により砲撃戦で敗北することが懸念された。
このため、これら日本海軍の高速戦艦群を上回る機動性と砲力を備えた主力艦建造を急いだ。こうしてアイオア級は誕生した。
主砲には、それまでのサウスダコタ級を上回る50口径16インチ砲を三連装砲塔3基に装備し、33ノットの戦艦史上最高速度を有する高性能艦となった。
(1943-: 55,000t, 33 knot, 16in *3*3, 4 ships (6 ships planned), ***mm in 1:1250 by Neptun)
改アイオア級(イリノイ級)18インチ搭載艦の建造
アイオア級建造中に、日本海軍の新型戦艦が18インチ砲搭載艦であることが判明し、加えてその前級である相模級戦艦も18インチ砲を搭載していることが判明した。このため、急遽、建造される予定であったアイオア級5番艦、6番艦を18インチ砲搭載艦として建造することが決定し、さらに、2隻を同級に追加し、4隻の18インチ砲搭載艦を建造することとなった。(イリノイ、ネブラスカ、デラウェア、ジョージア)
一方で、パナマ運河の通行を可能とするために、艦幅はアイオア級に準ぜねばならず、33ノットの速力を保持した上で、18インチ砲搭載による重量増加、さらには同砲射撃時の砲撃精度をこの艦幅でどのように担保するか、難しい課題に対する設計見直しが行われた。
結果、上部構造をコンパクトにすることにより浮いた重量分を主砲関係の重量増加と、18インチ砲装備による防御力向上に向けられることとなった。結果、期間対する余裕が前級よりも少なくなり、30ノットの速度に甘んじる結果となった。
(1944, 55,000 t, 30 knot, 18in *3*3, 4 ships, (6 ships planned), ***mm in 1:1250 by Superior)
(イリノイ級:イリノイ、ネブラスカ、デラウェア、ジョージア)
改イリノイ級(バーモント級)の建造:16インチ砲への回帰
上述のように艦幅と排水量の上限が課せられた条件で、様々な工夫が盛り込まれたイリノイ級の設計であったが、そもそもが18インチ砲対応の防御力が予定されていないこと(日本海軍の長門級に対応したコロラド級の設計変更、条約明け後のノースカロライナ級の設計変更時にも、主砲口径のアップとその防御力のアンバランスという同様の事象が発生した)、併せて18インチ砲搭載には不十分な艦幅からくる射撃時の精度簿速が判明したことから、イリノイ級5番艦(バーモント)・6番艦(ロードアイランド)は、16インチ砲搭載艦として建造することが決定した。
(1945, 55,000 t, 34 knot, 16in *3*3, 2 ships, ***mm in 1:1250 by Superior)
この設計変更は非常に成功で、速度はタイプシップであるアイオア級を上回る34ノットとなったし、その射撃精度も、米国の戦艦史上最高を記録した。
アイオア級の項で記述したように、米海軍では来るべき日米の艦隊決戦では、空母機動部隊を中心とした前哨戦で制空権を握った後に、主力艦同士の砲撃戦を行う、という構想を持っていた。これも前述のようにアイオア級はその前哨戦を制するべく設計された空母部隊との帯同を想定した高速戦艦として建造されたが、モンタナ級は、前哨戦の後、主力艦同士の砲撃戦を想定して設計、建造された「低速戦艦」であった。低速といっても、28ノットを発揮でき、サウスダコタ級、ノースカロライナ級などとは同等に行動できる。
主力艦同士の砲撃戦を制すべく、アイオア級と同じ、新開発の55口径16インチ砲を三連装砲塔4基16門、搭載する強力な戦艦となった。
(1946, 60,500 t, 28 knot, 16in *3*4, 4 ships, ***mm in 1:1250 by Superior)
モンタナ級が搭載した主砲は、アイオア級以降の戦艦が搭載していたMk.7 50口径16インチ砲であったが、この砲はサウスダコタ級やノースカロライナ級が搭載したMk.6に比較して、発砲初速が速く、長い射程を誇る高性能は砲であった。早い初速から風等の影響を受けにくく、散布界(斉射時の砲弾のばらつき)が小さくなり高い射撃精度を得ることができ、遠距離砲戦に適していた。
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