JMSDF: 海上自衛隊 護衛艦発達史
草創期(1952〜1960ごろ)
海上自衛隊の発足と艦艇整備
朝鮮戦争の勃発とともに自衛隊の前身である警察予備隊が発足し(1950年)、日本は再び戦力を保持することとなった。
1952年には海上警備隊が組織され、1954年自衛隊法施行とともに海上自衛隊と名称変更された。
発足当時の目的は、もちろん日本周辺海域の警備活動であり、具体的には、強い南進意向を示すソ連海軍(太平洋艦隊)の特に潜水艦の行動に対し警備行動をとることであったため、対潜能力の充実が求められた。
貸与艦の時代
海上警備隊発足当時、1952年に締結された日米船舶貸借協定に基づき、多数の駆逐艦、護衛駆逐艦、上陸支援艦艇が、米海軍から貸与され、黎明期の海上自衛隊の戦力の中核を構成した。
18隻の米海軍のタコマ級パトロール・フリゲートが貸与された。
18ノットの低速ながら、3インチ単装砲3基、40ミリ連装機関砲2基を装備し、ヘッジホッグ、爆雷投射機8基、爆雷軌条等の対潜装備を搭載。質量ともに草創期の戦力の主力を構成した。(1450トン)
(74mm in 1:1250 Delphin社製のモデルを転用。主砲のみ3D printing makerのSNAFU store製のWeapopn setに換装)
Tacoma-class frigate - Wikipedia
米海軍から貸与された2隻のリヴァモア級駆逐艦(エリコン・メイソン)である。
既に米海軍在籍当時に旧式艦として扱われ、魚雷発射管を撤去して掃海駆逐艦の艦種変更していたが、37ノットの速力を誇り、5インチ単装砲4基、40ミリ四連装機関砲2基、爆雷投射機4基等を装備していた。1600トン。
(85mm in 1:1250 Neptune社製モデルをベースに、模型的には船体中央の魚雷発射管を撤去。主砲塔を3D printing makerのSNAFU store製のWeapopn setの5インチ砲塔に換装、2番主砲塔直後にヘッジホッグ、3番主砲塔前に連装機銃座をそれぞれ追加)
Gleaves-class destroyer - Wikipedia
米海軍から貸与された2隻のキャノン級護衛駆逐艦(アミック・アサートン)で、いずれも長船体タイプである。大戦中に量産された代表的な護衛駆逐艦であり、対空・対潜装備に充実していた。1240トン、速力20ノット、3インチ単装砲3基、40ミリ連装機関砲3基、ヘッジホッグ、爆雷投射機8基等。
(75mm in 1:1250 Neptune製キャノン級をほぼそのまま転用)
Cannon-class destroyer escort - Wikipedia
前述のくす級18隻の貸与と同時に、50隻のLSSL(上陸支援艇)が貸与された。揚陸支援を目的に開発された艦種であるために、喫水が浅く、航洋性に乏しいが、小さな船体の割には大きな兵装を保持していた。300t, 12ノット、40ミリ連装機関砲3基等。
(39mm in 1:1250 Hai製LSSLをほぼそのまま転用)
国産護衛艦 の新造(プレ一次防・一次防)
昭和28年度予算で、16隻の艦艇建造が認められ、いよいよ国産護衛艦の時代を迎えた。所謂、プレ一次防、一次防での護衛艦整備が始まった。
DE 護衛艦あけぼの
前述の28年度予算で建造が認められた3隻の乙型(小型)警備艦の1隻である。本艦のみ推進機関は蒸気タービンである。3インチ単装砲2基、40ミリ連装機関砲2基、ヘッジホッグ1基、爆雷投射機8基を装備している。1060トン、28ノット。
(71mm in 1:1250 Hai製をほぼそのまま)
JDS Akebono (DE-201) - Wikipedia
前出の「あけぼの」と同じく28年度予算で建造された3隻の警備官のうちの2隻である。 「あけぼの」が蒸気タービンを主機に採用したのに対し、本級はディーゼルを主機としている。主要な兵装は「あけぼの」と同じく、3インチ単装砲2基、40ミリ連装機関砲2基、ヘッジホッグ1基、爆雷投射機8基である。1070トン、25ノット。
(70mm in 1:1250 Hai製をほぼそのまま)
Ikazuchi-class destroyer escort - Wikipedia
(直上は昭和28年度予算で建造されたDE:乙型(小型)護衛艦3隻。左から、あけぼの、いかづち、いなづま)
28年度予算では前出の3隻の乙型警備艦に加え、「はるかぜ」級2隻の甲型警備艦の建造が認められた。本級は旧日本海軍の白露級駆逐艦、米海軍のギアリング級駆逐艦を基本設計の参考としたとされている。主機には蒸気タービンを採用し、30ノットの速力を得た。兵装は5インチ単装砲3基、40ミリ四連装機関砲2基、ヘッジホッグ2基、爆雷投射機8基等を主要兵装として搭載している。1700トン。
(85mm in 1:1250 Hai製をほぼそのまま。主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)
Harukaze-class destroyer - Wikipedia
本艦は新造艦ではなく、旧海軍の丁改型駆逐艦「梨」の後身である。本艦の前身である「梨」は、太平洋戦争末期に米海軍の空爆で瀬戸内海で沈没。のちに引き揚げられ、自衛艦として再就役した。兵装は一旦すべて撤去され、実用実験隊に所属し、新型兵装の実験装備等に従事していた。1250トン、26ノット、で、兵装は都度異なるが、1957年ごろの兵装は、3インチ連装速射砲1基、ヘッジホッグ1基、爆雷投射機4基等であった。
(80mm in 1:1250 写真はNeptune製程型駆逐艦:松級の竣工時の姿。自衛艦時には兵装は全ていったん撤去のうえ、実験的な装備を追加した。※後日、自衛艦時への改造を予定しています。自衛艦時のモデルを製作次第、アップします)
本艦も新造艦ではなく、米海軍フレッチャー級駆逐艦2隻の貸与を受けたものである(ヘイウッドL. エドワーズ・リチャードP. リアリー)。当初から両艦ともに練習艦任務に充当されることが多かった。
2050トン、35ノット、5インチ単装砲4基、40ミリ連装機関砲5基、爆雷投射機6基
(93mm in 1:1250 Neptune製フレッチャー級をベースに、船体中央の魚雷発射管を撤去、主砲塔をSNAFU store製のWeapopn setに換装)
Fletcher-class destroyer - Wikipedia
対潜能力の充実に重点を置いた護衛艦として、1955年から1958年にかけて、7隻が建造された。
前出のはるかぜ級護衛艦退けんずの経験を踏まえ、これを拡大強化する形で設計された。設計方針は前級とは大きく異なり、砲熕兵器を抑える代わりに対潜装備を拡充した。
1700トンの船体に蒸気タービンを主機として搭載し、32ノットの速力を発揮することができた。砲熕兵器は前級の5インチ単装砲3基から口径を抑えた3インチ連装速射砲3基として、単発での威力よりも速射性能を充実させた装備となった。一方、初めて対潜誘導魚雷および短魚雷を搭載、さらに旋回能力のあるヘッジホッグ、爆雷投射機などを搭載し、対潜戦闘能力を充実させた。
本級、およびこれに続く「むらさめ級」、「あきづき級」は、その船体の特徴として、長船首楼型の船型を採用したが、強度の弱点を補う方法として、接合部に緩やかな傾斜をつけた連続した甲板の形態をとった。この傾斜からこの3クラスは「オランダ坂」型護衛艦と呼ばれ親しまれた。
(89mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)
(直下の写真は、本級および「むらさめ」級、「あきづき」級等の昭和30年度予算護衛艦の特徴の一つである、所謂「オランダ坂」のアップ)
Ayanami-class destroyer - Wikipedia
前出の「あやなみ級」が対潜戦闘能力を充実させた護衛艦であるのに対し、本級は砲熕兵器の充実による対空戦闘能力の充実を図った護衛艦として、1956年、1957年にかけて3隻が建造された。
「あやなみ級」とほぼ同様の船体を持ち、1800トンの船体に蒸気タービンの主機を搭載し、30ノットの速力を発揮した。
新型の54口径5インチ単装砲3基を新設計の砲塔に搭載(Mk 39 5インチ砲)し、併せて、「あやなみ級」と同じ3インチ連装速射砲を2基搭載、対空砲熕戦闘能力を格段に強化した設計とした。
一方、「あやなみ級」の装備を基本としながらも、魚雷装備は短魚雷の搭載のみにとどめ、旋回式のヘッジホッグ、爆雷投射機等を装備した。
(87mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに5インチ単装砲、3インチ連装速射砲をSNAFU store製のWeapopn setに換装)
Murasame-class destroyer (1958) - Wikipedia
旗艦装備を備えた汎用護衛艦として、1960年から2隻が建造された。
「あやなみ級」、「むらさめ級」に比べ船体は同一設計思想ながらやや大型化し、2000トンに達した。蒸気タービンを主機として32ノットの速力を発揮した。
砲熕兵器は「むらさめ級」を踏襲し、新型の54口径5インチ単装砲3基を新設計の砲塔に搭載(Mk 39 5インチ砲)し、加えて3インチ連装速射砲を2基搭載した。対潜兵器としては、米海軍より新たに供与されたMk.108「ウェポン・アルファ」 324mm対潜ロケット砲を搭載し、加えて、従来のヘッジホッグ、4連装魚雷発射管、短魚雷落射機、爆雷投射機等を搭載し、対空。対潜、いずれも非常に充実した装備となった。
(97mm in 1:1250 Hansa製モデルをベースに、喫水がやや高いため船体下部を金属用ヤスリでガリガリ削り調整。5インチ単装砲、3インチ連装速射砲をSNAFU store製のWeapopn setに換装。前部3インチ連装速射砲直後の対潜ロケット砲が特徴。丸い砲塔が、なんとも良い)
Akizuki-class destroyer (1959) - Wikipedia
(直下の写真は、昭和30年度以降の予算で建造されたいわゆる「オランダ坂」甲板を持つ護衛艦3クラス。奥から汎用護衛艦(DD)あきづき級、対空護衛艦(DDK)むらさめ級、対潜護衛艦(DDE)あやなみ級)
(直下の写真は、昭和30年度以降の予算で建造されたいわゆる「オランダ坂」甲板を持つ護衛艦3クラスを上から見たもの。上から汎用護衛艦(DD)あきづき級、対空護衛艦(DDK)むらさめ級、対潜護衛艦(DDE)あやなみ級。主砲配置等の際がよくわかる)
最後の「オランダ坂」護衛艦群で、護衛艦の機能分化の方向性が示された。以降、護衛艦の開発はそのような方向性をより強く意識したものになってゆく。
本格的国産護衛艦の時代
第2次防衛力整備計画以降、国産護衛艦の建造が本格化した。
この時期に、海上自衛隊の護衛艦種の整備方針、並びに基礎となる建艦技術、兵装方針等が確立してゆく。
DDE いすず級護衛艦 (1961- 同型艦・準同型艦 4隻)
Isuzu-class destroyer escort - Wikipedia
第1次防錆力整備計画(1次防)に準じ、沿岸部での対潜哨戒、船団護衛を主目的として建造された乙型(小型・沿岸部用)護衛艦である。(1490トン)
大きな特徴としては、初めて遮浪甲板型という船型が取り入れられた点である。この船型は、通常の平形甲板型の船体にさらに一層の全通甲板重ねた船型であり、これにより格段の船内スペースを確保することができ、発達著しい電子装備類、空調機器に対するスペースが確保され、併せて居住性が格段に改善された。以降の護衛艦の船型の基礎となった。
主機はディーゼル機関を採用し、25ノットの速力を発揮した。
主砲には、前回紹介した「あやなみ級」で採用された50口径3インチ連装速射砲(アメリカ製のMk.33をライセンス生産した57式)を艦首・艦尾に1基づつ搭載した。
本砲は半自動式砲で、ラピッドファイアと呼称され、毎分45発(砲身あたり)の射撃速度を持つ優れた砲である。
対潜装備としては、初めてヘッジホッグを廃止し、「あきづき級」と同じくMk,108対潜ロケット砲と対潜誘導魚雷を搭載し、更に爆雷投射機と投射軌条を装備している。
Mk.108対潜ロケット砲は、ロケット弾を目標近辺に投射し、搭載する磁気信管で目標を感知させ炸裂させるもので、250−800メートルの射程を持ち、毎分12発投射することができた。
(筆者はこの対潜ロケットが大好きです。というのも小学生の頃の愛読書、小沢さとる先生の名作「サブマリン707」に登場していまして、なんと未来的な(SFなんて言葉知らなかったからね)すごい兵器なんだろう、というのが原体験なのです。興味のある方は是非ご一読を)
本砲は、期待の新兵器として導入されたものの、 不発率が高いなどの欠陥を抱えており、運用部隊には不評で、後にM/50のライセンス生産版である71式ボフォース・ロケット・ランチャーに換装された。
ja.wikipedia.org
(74mm in 1:1250 実はいすず級のモデルは、1:1250スケールではどこを探しても見当たらない。そこでほぼ寸法等が近いDelphin社のちくご級をベースにセミスクラッチしたものが、直下の写真。武装は最近よくお世話になっているSNAFU store製のWeapopn setを用いた)
(筆者の大好きな対潜ロケットは、前回紹介したHansa社製の「あきづき級」のモデルから移植した)
DDG ミサイル護衛艦 あまつかぜ(1965- 同型艦なし)
海上自衛隊初の艦対空ミサイル搭載艦、いわゆるミサイル護衛艦で、1次防で1隻のみ建造された。 次級のたちかぜ級護衛艦「たちかぜ」の就役までの11年間、当時は海上自衛隊唯一の艦対空誘導ミサイルの搭載艦であり、その後も数次に渡り段階的にミサイル護衛艦が導入されたため、自衛艦としては異例の30年の長期間、現役にあった。
船型は、上述の「いすず級」護衛艦で導入された遮浪甲板型を採用し、機関には蒸気タービンを搭載し、33ノットの速力を得た。(3050トン)
海自初の艦対空ミサイルシステムとして、当時米海軍で採用されつつあったターターシステムを導入した。
本システムは、後にイージスシステムが採用されるまで、デジタル化等の改善を重ねながら長らく海上自衛隊の基幹艦対空システムとして、本艦を皮切りに「たちかぜ級」、「はたかぜ級」護衛艦に搭載された。
他の主要兵装としては、主砲には前出の50口径3インチ連装速射砲2基を搭載し、その他対潜兵器としてはヘッジホッグと対潜誘導魚雷を搭載していた。
後にアスロック(後述)8連装発射機を追加装備し、対潜能力を向上させ、次世代護衛艦と火力を同等にするなどの改装を受けた。
(104mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装。アスロック搭載後を再現してみた)
DDK やまぐも級護衛艦(1966- 同型艦:前期型・後期型 6隻)
Yamagumo-class destroyer - Wikipedia
第2次防衛力整備計画で前期型3隻、3次防・4次防で後期型3隻が建造された。
建造に当たっては、次級である「たかつき級」護衛艦との役割分割が構想され、いわゆるハイ・ロー・ミックス構成として、本級はDDK(対潜業務)として設計された。(前期型2050トン・後期型2150トン)
船体遮浪甲板型を採用し、機関にはディーゼルを採用した。採用された機関は、小型の艦型による少ない燃料搭載にも関わらず長い航続距離をもたらしたが、一方で27ノットの速力に甘んじざるを得なかった。
(90mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)
兵装としては、海自で初めてアスロックを搭載した。
アスロックは対潜誘導魚雷をミサイルの先端に弾頭として搭載したもので、発射後は、事前に入力された飛翔距離で弾頭(魚雷)が切り離され、パラシュートにより軟着水した魚雷が捜索パターンで目標を探知し撃破する、というものであり、着水後の魚雷による目標補足能力の活用から、従来の対潜ロケットとは次元の異なる長射程での攻撃が可能となった。(射程:800-9100m)
当初は専用の8連装ランチャーからの発射が主流であったが、ターター・システム(Mk.26 GMSL)、あるいはVLSなどからの発射も可能となった。
他の兵装としては、主砲には既述50口径3インチ連装速射砲2基を搭載、対潜兵器としてこれも既述71式ボフォース・ロケット・ランチャー、対潜誘導魚雷を搭載した。
Takatsuki-class destroyer - Wikipedia
第2次防衛力整備計画で、前出の「やまぐも級」護衛艦で既述の通り、「やまぐも級」とのハイ・ロー・ミックス構成の構想の下、有力な対空・対潜戦闘能力を持つ多目的護衛艦(DDA)として4隻が建造された。
(106mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)
船型は海自標準となってきた感のある遮浪甲板型を採用し、主機には蒸気タービンを搭載し、32ノットの速力を得た。
主砲には新型の54口径5インチ単装速射砲(Mk.42)を採用し、これを艦首・艦尾に1基づつ計2基を搭載した。
本砲は毎分40発という高い射撃速度を誇り、23000メートルに達する射程距離と、同時に導入された全自動FCS(射撃指揮装置)と併せて、強力な防空圏を構成することができた。
他の兵装としては、既述71式ボフォース・ロケット・ランチャー、対潜誘導魚雷、アスロックに加え、さらに長距離の射程を目指しDASH無人対潜攻撃ヘリコプターを装備した。
アスロックを超える長い射程の確保に期待されたDASHであったが、本家の米海軍では事故が多発するなど不評であり、1969年に運用が中止され、これに連動して部品の供給等は停止した。これに伴い、海自でも運用が中止された。
FRAM改装
これまでに記述したように、本級は非常に有力な戦力であったが、ミサイル化の流れの中で装備には陳腐化が目立つようになった。一方で、急速な新戦力整備にも限界があるため、FRAM(艦隊再建近代化計画)の名の下に、同級の「たかつき」「きくづき」に対して大規模な改装が行われ、当時新鋭のはつゆき級と同等の戦力化が目論まれた。具体的な内容としては、艦尾部の5インチ砲、これも艦尾部にスペースを取っていたDASH関連装備を撤去し、短SAM(シースパロー)、ハープーン艦対艦ミサイル、20mmCIWS、および種々の電子装備の換装、追加などが行われ、8年程度の艦齢延長を目指した。
(直下はFRAM改装後のたかつき級。Amature Wargame Figuresの3Dモデルをベースに、武装をSNAFU store製のWeapopn setから転用)
(FRAM改装前後のたかつき級を比較。奥がFRAM改装後。改装前のたかつき級は艦尾部に大きなDASH運用スペースが取られている事がよくわかる)
Minegumo-class destroyer - Wikipedia
前出の「やまぐも級」護衛艦をタイプシップとして、DASHを主兵装とした対潜護衛艦として建造された。(2100トン)
船型・機関は「やまぐも級」護衛艦に準じたが、後甲板をDASH 運用スペースとしたため、上部構造の配置が変更され、煙突が一本になった。(28ノット)
(90mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに、アスロック搭載後を再現するために艦尾にアスロック8連装発射機を追加。主砲塔等をSNAFU store製のWeapopn setに換装)
兵装も「やまぐも級」に準じ、50口径3インチ連装速射砲、71式ボフォース・ロケット・ランチャー、対潜誘導魚雷そしてDASHを搭載した。既述のようにDASHは本家の米海軍での運用中止に伴い、海自でも運用が止められ、アスロックに換装された。
(直下の写真はやまぐも級とみなぐも級を比較したもの。ほぼ同様の装備ながら、武装の配置に大きな差が見られる。手前がやまぐも級)
Chikugo-class destroyer escort - Wikipedia
第3次防、4次防で、周辺防備を主目的としたDEとして、11隻が建造された。
同目的の前DEクラスである「いすず級」DEに準じ、遮浪甲板型船型を持ち、主機にディーゼル機関を採用した。(1470トン 25ノット)
(75mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)
1400トン足らずの小ぶりな船体ながら、兵装は「やまぐも級」DDKに準じた強力なものであった。主砲には50口径3インチ連装速射砲を搭載し、補助に40mm連装機関砲を艦尾に装備した。対潜兵器としてアスロックと対潜誘導魚雷を搭載している。
(直下の写真は、乙型(小型・沿岸用)護衛艦2級の比較。奥がちくご級。対潜ロケットからアスロックへの対潜兵装の変遷がよくわかる)
護衛隊群の整備・ DDHの登場
護衛隊群
貿易立国をその成長基盤とした急速な経済成長は、シーレーン防衛の重要さへの意識を高めた。
3次防・4次防の整備計画で、海上自衛隊の編成の基幹単位として、シーレーン防衛を担う護衛隊群の編成方針が徐々に確立した。
海上自衛隊は、その黎明期から洋上航空兵力の運用を検討し続けていた。
設立当初には、既に米海軍よりヘリ空母の貸与の申し出があったが、海自は時期尚早としてこの申し出を受けなかった。
1960年代に入り、当時の仮想敵であったソ連海軍の原潜配備の進展等により潜水艦脅威が増大した背景を受け、 改めてヘリコプター搭載護衛艦の建造が具体的に検討された。
先行する知見から、有効な対潜戦闘には4機のヘリコプターが必要であり、4機の常時運用体制を確立するためには、一個護衛隊群に最低6機のヘリコプター搭載能力が求められた。
各護衛隊群は、対潜水艦戦闘に有効な複数の対潜ヘリコプターの運用能力を有し、あわせて艦対空誘導ミサイルをその中核に据えた高い対空火網を構成する能力を有することを目指し、新造護衛艦群が建造された。
DDH はるな級ヘリコプター搭載護衛艦(1973- 同型艦 2隻)
Haruna-class destroyer - Wikipedia
(124mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapon setに換装。就役時の姿を示している。艦後部を広いヘリコプター発着甲板と、ハンガーが占めている)
「はるな級」護衛艦(DDH)は、 上記の護衛隊群の中核を担う艦として、海上自衛隊が初めて建造したヘリコプター搭載護衛艦である。(4700トン)
3機の対潜ヘリコプターを搭載し、艦後部に対潜ヘリコプター運用のための整備・格納庫と発着甲板を備えている。このタイプの護衛艦2隻を中核に護衛隊群を構成し、本稿の冒頭に述べた対潜ヘリ6機の運用体制を確保する、というのが本艦導入の基本構想であった。
船体の形態としては、自衛艦に定着した感のある遮浪甲板型をもとにその後端をカットした長船首楼型を採用し、ほぼその後部半分がデッキハンガー(整備・格納庫と発着甲板)で占められている。機関は蒸気タービンを搭載し、31ノットの速力を発揮した。
艦前部には、54口径5インチ単装速射砲(ライセンス生産の73式)を2基搭載し、あわせて対潜装備としてアスロックランチャーを搭載した。他に対潜誘導魚雷の短魚雷発射管を搭載していた。
FRAM改修
1980年代に、後継の「しらね級」ヘリコプター搭載護衛艦に同等の能力を得るべくFRAM改修(艦隊再建近代化計画)が行われ、戦術情報処理システムの搭載、電波兵器の更新等に加え、個艦防御尿力の向上を目指しCIWS(20mmバルカン機関砲)と短SAM(シースパロー)が追加搭載された。
(直下の写真はFRAM改修後のはるな級の姿。艦橋部がやや大型化し、武装の追加が行われた)
シースパローは、近距離での個艦防空を担う対空ミサイルである。ターターシステム等の艦隊防空システムが、おおよそ16kmから40kmのレンジをカバーして艦隊(護衛隊群)全体に防空火網を形成するのに対し、シースパローは8km-18km程度の範囲で個艦と僚艦程度の範囲をカバーする。その名の示す通り元々は航空機搭載用の対空ミサイルを艦載型に改良したものである。
20mmバルカン機関砲と小型追尾レーダーの組み合わせで、小型の高速飛来目標を全自動で迎撃できるようにしたシステムである。有効射程は1.5km程度とされ、艦隊防空システム、僚艦防空ミサイルが撃ち漏らした飛来目標に対する最終火網を担当する。
発射速度は毎分4500発とされているが、弾倉の装填数は1500発程度で、20秒程度で撃ち尽くしてしまう計算になる。再装填には30分程度を要するため、波状的な襲撃に対しては弱点があるとする声もある。
(直上の写真は、FRAM改修で追加された武装。上段:大型化した艦橋部とCIWS。下段:ハンガー上部に追加されたSAM(シースパロー)発射機)
DDG たちかぜ級ミサイル護衛艦 (1976- 同型艦 3隻)
Tachikaze-class destroyer - Wikipedia
(115mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装。アスロック等最後を再現してみた)
本級は、ミサイル護衛艦「あまつかぜ」に次ぐ、第二世代のミサイル護衛艦(DDG)として3隻が建造された。
「あまつかぜ」に続き、ターターシステムを搭載し、これと主砲に採用した54口径5インチ単装速射砲(ライセンス生産の73式)2基をあわせて、護衛隊群の防空の要の役割を担った。
船体は護衛艦標準の遮浪式甲板型を採用し、蒸気ボイラーを主機としている。(3850トン、32ノット)本級の最終艦「さわかぜ」は、護衛艦として蒸気タービンを採用した最後の護衛艦となった。
上記の主要な対空兵装以外に、対潜兵器として、「しらね級」と同様に、アスロック8連装発射機と短対潜誘導魚雷を装備している。さらに後日、CIWS2基が追加装備され、近接防空能力も向上された。
同級3隻のうち、最後に建造された「さわかぜ」では、対空ミサイルの発射装置(Mk13)が更新され、ハープーン対艦ミサイルも発射できるようになった。
Mk 13はランチャーの直下に40発のミサイル弾庫を保有し、1分間に約7発のミサイルを発射することができる。
DDH しらね級ヘリミサイルコプター搭載護衛艦(1980- 同型艦 2隻)
Shirane-class destroyer - Wikipedia
(127mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをストレートに組んでみた)
本級は、海上自衛隊が建造した第二世代のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。
基本的に前級「はるな級」の拡大改良版であり、イージス艦の登場まで、海上自衛隊の護衛艦では最大の艦でもあった。(5200トン、32ノット)
船型は、「はるな級」に準じ遮浪甲板型をもとにした長船首楼型であり、前半部に主砲等武装を搭載し、後半分には、「はるな級」と同様、対潜ヘリ3機の整備・運用のためのハンガーデッキとなっていた。機関もはるな級同様、蒸気タービンを搭載している。
基本武装も、「はるな級」と同じく54口径5インチ単装速射砲(ライセンス生産の73式)を2基、主砲として搭載し、あわせて対潜装備としてアスロックランチャーと短対潜誘導魚雷を装備した。個艦防空武装としてはCIWS2基と短SAM(シースパロー)を最初から装備していた。
(DDH2代:はるな級(左) しらね級(右))
(護衛艦「いしかり」の概観:67mm in 1:1250 by Hai: マスト先端部を少し触ったのですが、少し大きすぎたかも)
護衛艦「いしかり」およびその拡大改良型である「ゆうばり級」護衛艦は、ともに、主として北方配備を想定して建造された沿岸警備用護衛艦(DDE)である。
当時、特に北方海域で仮想敵と想定されたソ連海軍は、艦対艦ミサイルを装備した大型対潜巡洋艦に加え、同じく艦対艦ミサイルを主兵装としたミサイルコルベットなど小型艦の配備傾向が見られ、これに対抗するために艦対艦ミサイルを装備した護衛艦の導入が求められた。
(「いしかり」の主要兵装の拡大:76mmコンパクト砲と艦橋前に据えられたボフォース対潜ロケットランチャー(上段)、対艦ミサイル「ハープーン」の発射キャニスター(下段))
「いしかり」および「ゆうばり級」には、艦対艦ミサイルハープーンが特徴的な4連装キャニスター形式で、自衛艦として初めて搭載された。
艦対艦タイプのハープーンは約140kmの射程を持ち、発射時に与えられた目標の位置データに向けて完成誘導されたのち、最終段階で自らの搭載レーダーによるアクティヴ・ホーミングにより目標に突入する。
また「いしかり」は自衛艦として初めて機関をガスタービンにした記念すべき艦でもある。小型の艦型へのガスタービンの採用により、その船型は中央船楼型となり、この船型は「ゆうばり級」でも踏襲された。
ハープーン以外の兵装としては、対潜装備としてボフォースロケットランチャーと短対潜誘導魚雷を装備している。
主砲には62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)を、これも自衛艦としては初めて採用した。
高い速射性能を持つ速射砲を小型軽量で優れた動作性を有する砲塔に搭載した個艦防御用の無人速射砲システムで、1分間に85発の発射速度を誇っている。(スーパーラピッドタイプでは1分間に120発)砲塔直下に回転式の弾倉を2層、もしくは3層備え、弾丸を供給する。
コンパクトで軽量な特性から、ミサイル艇などの小型艦艇にも搭載可能である。
Yūbari-class destroyer escort - Wikipedia
(「ゆうばり級」護衛艦の概観:71mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)
前述のような構想で建造された護衛艦「いしかり」であったが、元来が沿岸警備を担当していた「駆潜艇」の代替から発送された計画であったためもあって、関係が小型で、装備の目覚ましい進歩に対して余裕がなく、かつ北方海域の荒天下での運用にもやや課題があったため、本来同型艦として構想されていた2番艦以降の設計が見直され、一回り大きな「ゆうばり級」護衛艦が誕生した。
機関、兵装等は「いしかり」を踏襲したものとなった。中央船楼が延長されそこにCIWSを追加する計画もあったらしいが、実現されなかった。
「いしかり」を拡大改良した本級であったが、艦型が小型に過ぎるという評価は拭えず、後に「あぶくま級」護衛艦の登場を待たねばならなかった。
(「いしかり」(手前)と「ゆうばり級」の概観比較:「ゆうばり級」が「いしかり」の拡張改良版であることがよくわかります。 「いしかり」:1290トン 25ノット 「ゆうばり級」:1470トン 25ノット)
(手前から「いしかり」「ゆうばり級」そして海上自衛隊のDDEの現時点での最終形「あぶくま級」の艦型比較)
Hatsuyuki-class destroyer - Wikipedia
(104mm in 1:1250 Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装。アスロック等最後を再現してみた)
先述の、各3機の対潜ヘリを搭載するDDH「はるな級」、「しらね級」各2隻の就役により、 海自の理想とする対潜ヘリ6機運用可能な2個護衛隊群を保有することができた。
しかし、シーレーン防衛のためには、海自には4個護衛隊群の運用が必要とする構想があり、引き続き対潜ヘリ搭載能力の充実を構想に入れた新造護衛艦の建造が構想された。
この時期、長らく護衛隊群の主力を務めてきた第一世代の護衛艦が引退の時期を迎えつつあり、その代替である次級護衛艦の「はつゆき級」には、対潜ヘリ搭載能力が求められた。
「はつゆき級」は12隻建造され、その就役後には、4個護衛隊群全てが、ヘリ搭載護衛艦:DDH1隻(対潜ヘリ3機搭載)、対空担当艦としてミサイル護衛艦:DDG2隻(もしくは多目的自衛艦DDAを加える)、汎用護衛艦「はつゆき級」3隻(対潜ヘリ各1機搭載、計3機)、対潜護衛艦:DDK2隻の編成が可能となり、対潜ヘリ6機の運用能力を保有することになる。いわゆる8艦6機体制の護衛隊群を4個揃えることができるのである。
「はつゆき級」護衛艦は、遮浪甲板型を基にした長船首楼型の船型を持ち、海上自衛隊で初となるオール・ガスタービン推進方式を導入した。(2950トン 30ノット)
その兵装は、非常に充実している。
対潜兵装としては、1機の対潜ヘリに加え、アスロック発射ランチャーと、短対潜誘導魚雷を搭載した。さらに対艦兵装として、艦対艦ミサイルハープーンの4連装キャニスターを両舷に1基づつ搭載した。
対空兵装としては、主砲として62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)を搭載し、加えてSAM(シースパロー)発射機を艦尾に1基、個艦防御兵器としてCIWSを両舷に1基づつ搭載した。
これらの強力な兵装を、戦闘情報処理装置と連携し戦闘システムを構築した、海上自衛隊初のいわゆるシステム艦であるとされている。
DDG はたかぜ級ミサイル護衛艦 (1986- 同型艦 2隻)
Hatakaze-class destroyer - Wikipedia
(120mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをストレートに組んでみた)
本級は、護衛隊群の対空防御の要となるべく、第三世代のミサイル護衛艦(DDG)として2隻が建造された。
船型は遮浪甲板型を基にした長船首楼型であり、主機には「たちかぜ級」で検討されながら搭載に至らなかったガスタービンエンジンを採用した。(4900トン、30ノット)
本級は、前級「たちかぜ級」ミサイル護衛艦の3番艦「さわかぜ」が搭載したターターD・システムを、その主要兵装として搭載している。「あまつかぜ」、「たちかぜ級」DDGが全て艦後部にミサイルシステムを搭載しているのに対し、本級では艦首部に発射機を搭載している。これは護衛隊群を防御するために、全部搭載艦と後部搭載艦でペアを組ませる構想であったと言われている。
この対空誘導ミサイルシステムと、主砲に採用した54口径5インチ単装速射砲(ライセンス生産の73式)2基をあわせて、護衛隊群の防空の要の役割を担った。
これら対空兵装以外に、対潜兵装としてアスロック発射機と短対潜誘導魚雷を搭載、さらに艦対艦ミサイルハープーンの4連装キャニスターを2基、個艦防御用としてCiWS2基を搭載している。艦後部にはヘリコプターの発着甲板が設けられたが、ハンガー等の設備はなく、従って対潜ヘリの搭載能力はない。
(DDG3代:手前から、あまつかぜ、たちかぜ級、はたかぜ級)
(DDG3代:左から、あまつかぜ、たちかぜ級、はたかぜ級)
Asagiri-class destroyer - Wikipedia
(109mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをストレートに組んでみた)
初めてのヘリコプター搭載能力を持たせた汎用護衛艦であった「はつゆき級」は、前述のように万能な戦闘力を持った優れた艦であったが、比較的小さな艦型に多くを盛り込み、船体に搭載システムの更新等に対する余裕があまりない結果となった。
このため「あさぎり級」では、「はつゆき級」と装備に対する要求は同じながら、艦型を大型化し、余裕を持たせる設計とした。(3500トン、30ノット)
兵装は「はつゆき級」をほぼ踏襲し、62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)、AM(シースパロー)発射機1基、個艦防御兵器としてCIWSを両舷に1基づつ、アスロック発射ランチャー、短対潜誘導魚雷、艦対艦ミサイルハープーンの4連装キャニスター2基等を搭載している。
ハンガーが大型化され、艦載ヘリの定数は1機のままであるが、必要に応じ、2機までは運用できるようになった。
本級8隻の就役で、海上自衛隊は、「はつゆき級」と合わせて20隻の対潜ヘリ搭載汎用護衛艦を保有することになり、各護衛隊群あたり5隻の配置が可能となった。これにより、各護衛隊群はDDH1隻、DDGまたはDDA2隻、汎用護衛艦(DD)5隻の編成となり、ここに8艦8機体制が可能となった。(新八八艦隊と呼称されることもある)
(汎用護衛艦DD:2代 あさぎり級(左)、はつゆき級(右)。あさぎり級は船体ははつゆき級よりも大型化したが、艦橋部は一層低い構造であることがよくわかる)
Abukuma-class destroyer escort - Wikipedia
(88mm in 1:1250 Hai製モデル、ほぼストレート)
新八八艦隊世代に対応した、沿岸警備用小型護衛艦として、1990年代に相次い配備された。
ヘリコプターの搭載能力を除けば、「はつゆき級」汎用護衛艦とほぼ同等の装備を搭載した。 (2000トン、27ノット)
主砲に62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)、個艦防御兵器としてCIWSを艦尾に1基、対潜兵装としてアスロック発射ランチャー、短対潜誘導魚雷、さらに艦対艦ミサイルハープーンの4連装キャニスター2基等を搭載している。
(DE4代 手前からいすず級、ちくご級、ゆうばり級、あぶくま級)
イージス艦の登場
ターターシステムからイージスシステムへ
既述のように、海上自衛隊はシーレーン防衛を担う基幹単位として護衛隊群を構想、整備し、理想とする護衛艦8隻と搭載ヘリコプター8機からなる8艦8機編成、4個護衛隊群の保有を、1980年代後半に実現した。
8艦8機編成における各護衛隊群は、一般的には、DDH(ヘリコプター搭載護衛艦:ヘリ3機搭載)1隻、DDG/DDA(ミサイル護衛艦・対空戦闘担任艦)2隻、汎用護衛艦(ヘリコプター1機搭載)5隻 からなる。
この各護衛隊群の艦隊防空を担うのが、DDG2隻(もしくはDDG+DDA)であり、艦対空システムとして、永らくターターシステムがその主力防空システムであった。1960年代に建造されたミサイル護衛艦「あまつかぜ」で初めて導入され、続く「たちかぜ級」ではシステムのデジタル化、戦術情報処理装置が導入され、さらに「はたかぜ級」ではCIC化、機関のガスタービン化などにより、一応の完成形と評価されるに至った。
しかし一方で、仮想敵の機載対艦ミサイルの著しい発展、さらには発射プラットフォームである攻撃機自体の性能向上、電子戦機の導入などから、同時に1-2目標への対応を想定した従来のシステムでは性能上対処困難な事態が想定されるようになった。
こうした要請から、イージスシステムを搭載した護衛艦の導入が検討され始める。(システムの詳細は、下記のリンクに委ねたい)
イージスシステム(Aegis Weapon System: AWS)は、ターターシステムなど従来のいわゆる防空システムの枠にとどまらず、レーダー等のセンサーシステム、情報処理システム、武器システムを全て連結した統合的戦闘システムである。
同時に128目標を補足・追跡し、脅威度の大きい10目標程度を特定し迎撃することが、自動でできる。
このシステムへの接続は、イージスシステム搭載艦にとどまらず、他の機器搭載艦艇とも接続可能で、従って、個艦の武器システムのみでなく、例えば導入護衛隊群全体の武器システムによる艦隊防空が可能となる。
Kongō-class destroyer - Wikipedia
米海軍の同じくイージスシステム搭載艦であるアーレイ・バーク級駆逐艦をタイプシップとし、艦型・機関ともこれに準じている。
併せて、本級から、従来DDHが担っていた護衛隊群旗艦が同級に移管されることとなったため、上部構造および艦型も大型化した。(7250トン、30ノット)
(129mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
本級の中核的な装備となるのはもちろんイージスシステム(AWS)であるが 、そのセンサーシステムの中心的な役割を負う多機能レーダーは、艦橋の4面に固定された巨大なパッシブ・フューズドアレイアンテナに象徴され、これに上記の旗艦施設などを加え、非常に重厚な上部構造物を構成している。
これに連動するミサイル発射機はMk. 41 VLS(垂直発射機)を艦首甲板に29セル、艦尾甲板に61セルを装備している。
(Mk.41 VLS こんごう級艦首甲板の29セルと艦尾甲板の61セル。VLS前方には主砲として装備されたオート・メララ製54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)が写っている)
他に対空兵装としては、主砲にオート・メララ製の54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)を装備し、近接個艦防空用に2基のCIWSを艦上部構造の前後に保有している。
対潜兵装としては、前述の艦首部のMk.41 VLSに垂直発射型のアスロック(VLA)を装備し、併せて対潜短魚雷発射管を両舷に装備している。
対艦兵装としては、艦対艦ミサイルハープーンを4連装ランチャーで2基装備している。
DDGとして前級に当たる「はたかぜ級」DDGと同様に、艦後部にはヘリコプターの発着甲板が設けられたが、ハンガー等の設備はなく、従って固有の対潜ヘリコプターは保有しない。
Murasame-class destroyer (1994) - Wikipedia
汎用護衛艦の第二世代として、「むらさめ級」は9隻が建造された。現在の護衛隊群の基準構成艦となっている。
兵装等の装備は前級と同様を想定しながら、搭載電子機器類の増加への対応や、ヘリ運用能力の強化、居住性改善等の要請から、船体は大型化した。(4550トン、30ノット)
(120mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
前述のように、兵装は前級である「あさぎり級」とほぼ同様である。
砲熕兵器としては、主砲に62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)、個艦防御兵器としてCIWSを両舷に1基づつ搭載している。
主要対潜装備としては短対潜誘導魚雷発射管とアスロックを装備し、対空兵装としてはSAM(シースパロー)を、いずれも垂直発射式で搭載している。
アスロックは艦首部のMk. 41 VLS 16セルに搭載されている。
SAM(シースパロー)は、艦中央部にMk. 48 VLS 16連装のキャニスターに収容された。
いずれも、搭載弾数は前級と同様ながら、いずれもVLS搭載とすることで、即応発射弾数は倍になった。
(前部甲板に装備されたMk.41 VLS 16セル:アスロック用と、艦中央部に装備されたMk.48 VLS 16キャニスター:シースパロー用)
艦対艦兵装としては、従来のハープーンに替えて国産の90式対艦誘導弾を4連装キャニスター2基に搭載している。
加えて1機の対潜ヘリコプターを固有の搭載兵装として保有したが、ハンガーは「あさぎり級」よりも大型化され、「あさぎり級」ではあくまで応急的な運用とされていたのに対し、2機運用を想定したものとな離、実際にソマリア派遣等の際には2機運用が実施されている。
(艦尾部のヘリコプター発着甲板と大型化したヘリハンガー)
Takanami-class destroyer - Wikipedia
第二世代の汎用護衛艦として前級「むらさめ級」は建造されたが、本級はその最小限の改正型として建造された。前級の「むらさめ級」、次級の「あきづき級」と共に、現在の護衛隊群の基準構成艦となっている。(4650トン、30ノット)
その主たる改正点は、Mk.41 (アスロック用)とMk.48(シースパロー用)の2種のVLSの併載の解消による運用の合理化と、主砲射撃能力の向上の要請への対応、更に前級で可能となったヘリコプター2機運用体制への本格的対応等であった。
(120mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
兵装は基本的に前級「むらさめ級」に準じるが、VLSは艦首部のMk. 41 32セルに統合され、 主砲は「こんごう級」と同様のオート・メララ製の54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)を搭載した。
(艦首甲板のMk.41 VLS 32セル :たかなみ級ではVLSを艦首部の一か所にまとめて装備した。セル数の増加で装備方法が変更され、甲板よりも一段上がった装着方法となった。VLS前方には主砲として装備されたオート・メララ製54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)が写っている)
ヘリの2機運用体制については、前級「むらさめ級」では1条であったRAST発着艦支援装置の機体移送軌条を2条とし、さらに上記の「むらさめ級」では艦中央部、ハンガー前部に隣接していたシースパロー用のMk. 48発射機を、艦首部に統合移設したことから生まれたスペースでハンガーを拡大、ヘリ運用スペースやヘリ用の弾庫の拡大により本格的な2機運用体制を充実させた。
(艦尾部のヘリコプター発着甲板と大型化したヘリハンガー)
(艦尾部のヘリコプター発着甲板:むらさめ級(上)では1条だったRAST発着艦支援装置の機体移送軌条が、たかなみ級(下)では2条に追加されたことがわかる)
当初計画では、本級を11隻建造し、8艦8機編成を充足する予定であったが、実際には5隻で打ち切られ、新装備を搭載した次級の建造に移行することとなった。
(第二世代汎用護衛艦比較:むらさめ級(右)とたかなみ級(左)。主砲、VLS配置を除き、全体の配置は非常によく似ている。最小限の改正、ということか)
Atago-class destroyer - Wikipedia
海上自衛隊の2代目のイージスシステム護衛艦である。護衛隊群の8艦8機編成の維持にあたり、退役する「たちかぜ級」DDGの代替艦として建造された。
基本的には前級「こんごう級」の性能向上型であり、船体後部にハンガーを設けヘリコプター搭載能力を付加したことにより艦型がさらに大型となった。(7750トン、30ノット)
(131mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
イージスシステムは下位ユニットも含めバージョンアップされたものになっており、性能は向上している。
ミサイル発射機はMk. 41 VLSを前部甲板に64セル、艦尾部のヘリハンガー上部に32セルを搭載している。また近接防御兵器としてはCIWS2基を「こんごう級」同様、艦上部構造の前後に配置している。
(Mk.41 VLS あたご級艦首甲板の64セルと艦尾ヘリコプターハンガー上の32セル。本級から前部、後部のそれぞれの装填用クレーンが廃止された。上の写真にはあたご級から採用された主砲62口径5インチ単装砲(Mk. 45)が写っている)
対潜兵装は「こんごう級」と同じく垂直発射式のアスロックをMk. 41 VLSに収め、さらに対潜短魚雷3連装発射管を両舷に装備している。
対艦兵装としては、前出の汎用護衛艦と同様、ハープーンに替え国産の90式対艦誘導弾を装備、さらに主砲として62口径5インチ単装砲(Mk. 45)が装備されている。
「あたご級」の兵装変更の最大の目玉は既述の通りヘリコプター搭載能力の付加であり、艦後部にはヘリコプターハンガーが設けられた。
(あたご級の追加装備の目玉、艦尾部のヘリコプター発着甲板と大型ヘリコプターハンガー)
全通甲板型護衛艦(空母型DDH)の登場
潜水艦の静粛化、高性能化を想定する場合、多数のヘリコプターを搭載する空母型護衛艦の保有は、海上自衛隊にとって、多年の念願であった。本稿で既述ではあるが、遡れば、古くは海上自衛隊発足時に既に米海軍からはヘリ空母として運用可能な小型空母の貸与の申し出があった。
併せて、冷戦終結後の複雑化する周辺の国際状況、非正規軍事勢力への対応等を想定した場合、あるいは要請が高まりつつある国際平和活動、災害救援活動等にも、機動性に富む多数の航空機運用が可能な艦艇の保有は、次第に必要性の度合いを高めた。
こうして、いよいよ海上自衛隊は空母型DDHを中心とした編成の時代を迎えるのである。
DDH ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦(2009- 同型間2隻)
Hyūga-class helicopter destroyer - Wikipedia
海上自衛隊が初めて導入した空母型(全通甲板型)ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。最大の特徴は、なんと言っても多数のヘリコプターの運用能力がある事で、固有の搭載機こそ、「はるな級」DDHや「しらね級」DDHと同様に3機であるが、格納甲板には8機分の収納スペースが確保されており、最大10機のヘリコプター運用能力があるとされている。
併せて、護衛隊群司令部の収容に対応する司令部施設も設計当初から組み込まれており、高い通信機能等も保有し、災害時の対策本部機能、海外派遣時の統合任務部隊の司令部機能などへの活用が期待されている。
これらを具現化するために、船体は非常に大型化し、護衛艦としては初めて基準排水量が10000トンを大きく超える大型艦となった(13950トン、30ノット)。
(158mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
同級DDH、いわゆる通常の航空機の運用に特化した「空母」と異なる点は、Mk.41 VLS 16セルから、対空・対潜ミサイルを発射する護衛艦としての戦闘能力を有し、併せて対潜短魚雷発射管も保有しているところである。
(直上の写真は、飛行甲板最後尾に配置されたMk.41 VLS)
Akizuki-class destroyer (2010) - Wikipedia
「むらさめ級」(9隻)、「たかなみ級」(5隻)と続いた汎用護衛艦第二世代の発展形として4隻が建造された。現在の護衛隊群の基準構成艦となっている。(5100トン、30ノット)
イージス艦への要請が、周辺有事の変化により艦隊防空から弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)に拡大する事によって、BMD対応時には両立の難しいAWSを汎用護衛艦で対応しようとの目的で、僚艦防空の能力を備えるFCS-3A射撃システムを中核とする防空システムを搭載している。
(121mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
大小1組から構成されるFCSー3A多目的レーダーを艦上部構造の、艦橋とヘリコプターハンガー上の4面に貼り付けて装備しており、ステルス性を意識した形状となった。
(直上の写真は、艦上部構造の4箇所に貼られたFCSー3A多目的レーダーアンテナ)
兵装は、基本的に「あたご級」DDGに準じ、艦首部のMk. 41 VLS 32セルに、発展型シースパロー(ESSM)と垂直発射型アスロック(VLA)を搭載、 主砲には62口径5インチ単装砲(Mk. 45)、対艦兵装として90式対艦誘導弾の4連装キャニスター2基、さらに対潜兵装として対潜短魚雷3連装発射管を両舷に装備、個艦防空用にCIWS2基を搭載している。
(艦首部の主要兵装。Mk. 41 VLS 32セル:発展型シースパロー(ESSM)と垂直発射型アスロック。 主砲:62口径5インチ単装砲(Mk. 45)。CWIS)
(艦後部のヘリハンガー)
ヘリコプターの搭載定数は1機、しかし2機までの運用が可能である点は、「たかなみ級」と変わらないが、着艦拘束装置(RAST)が省力化に対応したものに更新され、着艦誘導支援装置が搭載されている。ハンガーは「たかなみ級」よりも大型化された。
DDH いずも級ヘリコプター搭載護衛艦(2015- 同型艦2隻)
Izumo-class multi-purpose operation destroyer - Wikipedia
(200mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)
前級「ひゅうが」級をさらに大型化し、航空機運用能力や多用途性を強化したものとなっている。「ひゅうが」級の船体を排水量で6000トン、長さにして51m拡大し、搭載機数も固有の艦載機を7機、最大搭載機数を14機とした。(19500トン、30ノット)
一方で個艦戦闘能力は抑えられ、近接戦闘用のCIWS2基とSea RAM近SAMシステム2基を搭載するのみとなった。
(「いずも級」の固有武装のアップ:艦尾に配備されたSea Ram(上段手前)とCIWS。艦首のCIWS(下左)と艦橋前のSea Ram)
上述のように固有武装を最小限にした背景には、同級はもはや単独での運用を想定されておらず、すなわち常に他の護衛艦を伴い、その旗艦機能を果たすことを想定されていることに準じている。この構想のもと、前級「ひゅうが」級で設定された司令部施設は充実されており、100名規模の統合任務部隊司令部が収容できる多目的スペースを有している。
(「ひゅうが級」(手前)と「いずも級」の大きさ比較。「いずも級」がいかに本格的かを示している?)
「いずも級」は以降の整備時に艦首部を角形に変形しするなど、固定翼機の配備にも対応できるような改修を施される予定。最大の改修ポイントは、飛行甲板や上部構造物の熱耐性を上げることになると思われる。
ja.wikipedia.org Asahi-class destroyer - Wikipedia
「あきづき級」に続き、第二世代汎用護衛艦の最終形として2隻が建造された。本級の建造により「むらさめ級」9隻、「たかなみ級」5隻、「あきづき級」4隻と併せ、第二世代汎用護衛艦の建造数は20隻となり、海上自衛隊の基幹単位である8艦8機(新八八艦隊)編成の4個護衛隊群に必要な汎用護衛艦を全て第二世代で賄うことも、理論上は可能となった。
本級は「あきづき級」をベースとして新型ソナーシステムを搭載し対潜戦闘能力を強化する一方で、僚艦防空の能力を省いたシステムを搭載したタイプとなっている。
主機には、護衛艦として初めて電気式推進を主推進としたハイブリッド推進機関(COGLAG)を搭載している。これは低速時、巡航時にはガスタービン発電を用いた電気式推進を用い、高速時にはガスタービンエンジンによる直接機械駆動も併用する形式で、燃費に優れるとされている。(5100トン、30ノット)
兵装は「あきづき級」と同じで、艦首部のMk. 41 VLS 32セルに、発展型シースパロー(ESSM)と垂直発射型アスロック(VLA)を搭載、 主砲には62口径5インチ単装砲(Mk. 45)、対艦兵装として90式対艦誘導弾の4連装キャニスター2基、さらに対潜兵装として対潜短魚雷3連装発射管を両舷に装備、個艦防空用にCIWS2基を搭載している。
ヘリコプターの運用については、搭載機定数1、搭載能力2機は「あきづき級」に準じるが、RASTの機体移送軌条は、2条から1条に改められており、洋上での2機の同時運用は現実的ではない。
(121mm in 1:1250 3D Printing メーカー、Amature Wargame Figures(Nomadire)のキット。マストと兵装の一部はF-toysのキットから転用)
Maya-class destroyer - Wikipedia
「まや級」DDGは、「はたかぜ級」DDG の代艦として建造されたイージスシステム搭載ミサイル護衛艦(DDG)である。本級の建造で、海上自衛隊の4個護衛隊群は、その艦隊防空をそれぞれ2隻のイージス艦で賄う事が可能となる。
本級は「あたご級」DDGの設計を基本として、推進機関を電気推進(COGLAG)に改めたものである。これに伴い、関係がやや大型化した。(8200トン、30ノット)
搭載するイージスシステムは、弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)により対応力を向上させたバージョンを搭載している。
兵装は「あたご級」に準じたものを搭載している。
主砲として62口径5インチ単装砲(Mk. 45)、対艦兵装としては、国産の90式対艦誘導弾を4連装キャニスター2基に装備、さらに主砲として62口径5インチ単装砲(Mk. 45)が装備されている。
前甲板にMk . 41 VLSを64セル、艦尾部のヘリハンガー上部に32セルを搭載、ここからSMー2, SMー3併せて垂直発射型のアスロックを発射する。対潜兵装として対先端魚雷発射管を2基、艦の両舷に配置し、また近接防御兵器としてはCIWS2基を、艦上部構造の前後に配置している。
固有の搭載ヘリコプターは保有しないが、艦後方のハンガーでは2機の運用が可能である。
(137mm in 1:1250 3D Printing メーカー、Amature Wargame Figures(Nomadire)のキット。マストと兵装の一部はF-toysのキットから転用)
DDHからDDV(固定翼機搭載型護衛艦)へ
既に前出の「いずも級」DDH 竣工前から本級での固定翼機搭載の可能性が議論されていた。防衛省の公式見解としては、検討の事実すら否定しているが、本級が最も近い距離にある事は間違いない。
「いずも級」で実現するかどうかはさておき、本稿では既にDDV「いぶき」が登場しており、これを再度紹介しておくこととしたい。
正確には、本稿での「いぶき」は、オリジナルの設定通り「いずも型護衛艦」にスキージャンプ台形式の飛行甲板をつけたもので、例によって「いずも型護衛艦」のモデルを既に上市されていた3D Printing メーカーさんにジャンプ台の追加をリクエストし、制作していただいた。
製作者のAmature Wargame Figures(Nomadire)は、主として第二次大戦以降のいわゆる現用艦(もしくは計画艦)に多くの作品があり、スケールも実に多岐にわたるラインナップを揃えていらっしゃる。今回のリクエストのような既成モデルの改変、あるいはスケール間のコンバージョンにも比較的気楽に対応してくださるので、大変ありがたく利用させていただいている。
モデルの素材は、White Natural Versatile Plasticというやや柔らかめで粘度のある樹脂で、下地処理をした後、普通に塗装ができる。(私の場合にはサーフェサーで下地処理をしたのち、エナメル塗料で塗装をしています。基本、全て筆塗りです)上掲の写真の通り、マスト、CIWS、SeaRAMなどの対空火器も全て一体整形された完成形で手元に届いた。下記の写真ではマストのみ、F-toys製のストックモデルと交換し、仕上げた。
搭載機も同様、3D Printing メーカーさん(SNAFU Store: SNAFU Store by Echoco - Shapeways Shops)によるもので、F-35JBの他に、X-47Bという無人機(下の写真では、ブリッジ後方の黒っぽく塗装されている数機)を搭載している、という設定になっている。(多分、オリジナルの設定はそんなことにはなっていないと思います。ヘリはF-toysのモデルから流用)
(Ibuki: 26,000t, CWIS *2, SeaRAM *2, F-35JB *15 etc, 202mm in 1:1250)
(直上の写真は「いずも級」DDH(手前)と「いぶき」の大きさ比較。「いぶき」は「いずも級」の設計をベースにした為、外観や上部構造物の配置は「いずも級」に準じたものになっているのがよくわかる。固定翼機の運用を想定した艦首形状や スキージャンプ台の配置が、架空艦とはいえ興味深い)
第五護衛隊群
DDV「いぶき」は、コミックでの設定では、海上自衛隊第5護衛隊群の所属となっている。
現在、海上自衛隊には4つの海上護衛隊群があり、それぞれがDDH(ヘリ搭載型護衛艦)1隻、DDG(誘導ミサイル搭載型護衛艦)2隻、DD(汎用護衛艦)5隻、計8隻の護衛艦で編成されている。(かつては、この8隻に8機の対潜ヘリが搭載されるような護衛隊群構成となった時期があり、「新88艦隊」などと呼ばれた)
コミックでは、DDV(航空機搭載型護衛艦)「いぶき」を中心に、第五護衛隊群は新編成され、DDG:イージス護衛艦「あたご」「ちょうかい」、DD:汎用護衛艦「ゆうぎり」「せとぎり」、AIP潜水艦「けんりゅう」、さらに補給艦「おうみ」がこれに所属する、という設定となっている。
(直上の写真は、第5護衛隊群の一部:奥からDD「せとぎり」、DDV「いぶき」、DDG「あたご」と同型の「あしがら」、潜水艦「けんりゅう」)
映画版ではDDG「あたご」は「あしたか」、DDG「ちょうかい」は「いそかぜ 」、汎用護衛艦「ゆうぎり」「せとぎ理」はそれぞれ「はつゆき」「しらゆき」、潜水艦「けんりゅう」は「はやしお」として登場する。
それぞれの詳細については、既に本稿の以下の回でご紹介していますので、そちらをご覧ください。
直上の写真は、DDV「いぶき」とDDG「やまと 」。
前述のように、DDV「いぶき」を中心に、第五護衛隊群が編成される。第五護衛隊群はその機動性から紛争地域周辺に展開されることが多く、イージス艦「やまと」も、持ち前のその戦闘力から、この護衛隊群に組み入れられることが多かった。
今回は、海上自衛隊護衛艦開発史のスピンアウト第二弾(誰が勝手にシリーズにしたんだ?)として、護衛艦「いそかぜ」について、いろいろと。
まず最初に、本稿を読んでいらっしゃるような方ならば(艦船好きな、というほどの意味です)、おそらくご承知のこととは思いますが、海上自衛隊に「いそかぜ」と言う名前の護衛艦は、その創設以来、かつて存在していません。
にも関わらず、護衛艦「いそかぜ」の名前は、そこそこ「有名」なのです。(そもそも、護衛艦の名前の認知率などは、たかが知れていますので、「有名」の基準とは何か、などと言う話は、まあ、それは、ちょっと横に置いておきましょう)
そして、実在しない護衛艦ながら、実は「いそかぜ」には、三つの形態があるのです。
今回は、そういうお話です。
まず最初に「いそかぜ」第二形態
海上自衛隊 護衛艦「いそかぜ」の名は、筆者の知る限り福井晴敏さんの小説「亡国のイージス」で初めて登場します。そしてこの小説が映画化され、その名は一層広く世に出ることになりました。(2005年)
「福井晴敏」という原作者にして優れたプロデューサーを持つ「亡国のイージス」は、小説に始まり、映画に続き漫画にもなる、と言ういわゆるメディアミックス展開されます。
https://www.youtube.com/watch?v=moqAqiyJ4eo&t=66s
「艦船好き」の皆さんなら、おそらく既にこの作品はご覧になったでしょうが、ざっとこの作品のあらすじをご紹介しておくと、イージス護衛艦「いそかぜ」を舞台として、「いそかぜ」を乗っ取り、東京湾でグソー(GUSOH)という化学兵器(毒ガス)によるテロを実行し、世界に反北朝鮮の世論を沸騰させ、祖国の政治形態を転覆させようとする北朝鮮の元工作員ホ・ヨンファ(中井貴一)と、それを防ごうとして、乗組員として潜入した防衛省情報局(DAIS)の工作員如月(勝地領)の死闘を描いたものでした。
映画では、「こんごう」級イージス護衛艦の3番艦「みょうこう」(DDG-175)が、「いそかぜ」の撮影舞台として使用されています。ですので映画に登場する艦番号は「175」なのです。
(直下の写真は、F-toysの「みょうこう」をストレートに組み立てたもの)
映画の中で、「いそかぜ」に乗組員として潜入した防衛省情報局の工作員に協力する「いそかぜ」の先任伍長仙石(真田広之)が、「グソー(化学兵器)を発射するなら、前部のVLSか、後部のVLSか・・・」と迷うシーンがありますが、下の写真は艦首と後甲板の艦番号。それぞれの少し後ろ(前?)に前後部のVLSが写っています。
仙石と如月は凄惨な死闘ののち、ホ・ヨンファの計画を阻止するのですが、最後に「いそかぜ」は自爆して沈没してしまいます。
余談ですが、亡国のイージスに登場する化学兵器「グソー(GUSOH)」は、アメリカ軍が沖縄で開発したVXガスの50倍の毒性を持つとされる神経ガスですが、福井晴敏さんの小説には数度にわたり登場します。(もちろんフィクションの世界です。・・・と筆者は希望します)
最初は「Twelve Y.O.」という小説で登場し、そのあまりに強力な毒性のために、漏出事件の末、ほぼ唯一効果を無効にできるテルミット・プラスという兵器(架空の強力な特殊焼夷弾)で、漏出を起こした辺野古基地ごと焼き払われてしまいます。(「辺野古ディストラクション」:福井作品では、しばしば登場します)
この残り(試料)が移送中に元北朝鮮工作員のホ・ヨンファに奪われて、「亡国のイージス」事件に話が繋がって行くのですが、さらに、これが驚くべきことに、数千年後にやはり福井晴敏さんの「ターンA・ガンダム」(小説名「月に繭 地には果実』)にも登場するのです。
ちなみに「グソー(GUSOH)」とは「後生」の沖縄方言読みで、冥界(死後の世界)を意味するそうです。
次に「いそかぜ」第三形態
そして「いそかぜ」は2019年に、もう一度映画に登場します。
それは本稿でも紹介した「空母いぶき」。「いそかぜ」は「いぶき」が所属する第五護衛隊群の一隻で、やはりここでも「こんごう」級イージス護衛艦の一隻、という設定です。
映画では「いそかぜ」ですが、原作であるコミックでは実在するイージス護衛艦「ちょうかい」として登場し、「いそかぜ」は登場しません。
ja.wikipedia.org
ちなみに、第五護衛隊群は原作コミックでは、「空母いぶき」(DDV-192)を中心に、これを護衛するイージス護衛艦「あたご」(DDG-177)、同じくイージス護衛艦「ちょうかい」(DDG-176)、汎用護衛艦「ゆうぎり」(DD-153)、「せとぎり」(DD-156)、AIP推進潜水艦「けんりゅう」(SS-504)、補給艦「おうみ」(AOE-426)で編成されていることになっています。
一方、映画では、諸々の設定の違い(周辺への配慮?)から、第五護衛隊群は全て架空艦で編成されています。「空母いぶき」(DDV-192)はそのままですが(これは元々架空艦です)、これを護衛するイージス護衛艦「あしたか」(DDG-190):原作では「あたご」、同じくイージス護衛艦「いそかぜ」(DDG-161):原作では「ちょうかい」、汎用護衛艦「はつゆき」(DD-122):原作では「ゆうぎり」、「しらゆき」(DD-124):原作では「せとぎり」、AIP推進潜水艦「はやしお」(SS-515):原作では「けんりゅう」、というような変更が加えられています。
(直下の写真は、「空母いぶき」版イージス護衛艦「いそかぜ」。F-toysの「ちょうかい」をベースにして、艦番号をデカールを貼り替えて変更しました。ちなみに艦番号「161」は、現用艦では使用されておらず、初代「あきづき」級護衛艦の一番艦「あきづき」の番号です)
(直下の写真は、艦首部、艦後甲板の艦番号の拡大)
そして、「いそかぜ」をこの映画で一際目立たせた要因は、なんと言っても山内圭哉さんが扮する浮舟艦長の「いてまえ〜!」ではなかったでしょうか?
原作コミックでも「ちょうかい」艦長の浮舟一佐は、ここぞと言う時には関西弁で指揮をとります。
そして「いそかぜ」第一形態
さて、なぜ、本稿が「いそかぜ」第二形態から始まったか、と言うお話になるのですが、これまで二形態の「いそかぜ」をご紹介してきましたが、この2隻はいずれも「こんごう」級イージス護衛艦の外観を示してきました(あまり明言はされていないような記憶があります)。
が、実は「亡国のイージス」の原作小説に登場するいわゆる初代「いそかぜ」は、「はたかぜ」級ミサイル護衛艦の3番艦として登場します。
皆さんはご承知だと思いますが、「はたかぜ」級ミサイル護衛艦は、海上自衛隊の対空ミサイル護衛艦としては第三世代にあたり、搭載するシステムはイージス・システムではなく、ターター・システムでした。ターター・システム搭載艦としては、「はたかぜ」級は最終世代に属し、システムもデジタル化し高度化し、イージス以前のミサイル駆逐艦としては頂点に立つ、という評価を得ていましたが、やはり弱点として、2-3目標までしか捕捉追尾出来ないと言う限界を抱えていました。
海上自衛隊でも次世代DDGとしてイージス・システム搭載艦が就役しており、第一線で活躍できる期間はそれほど長くないと思われていました。
一方、次々と就役が予定されているイージス艦は、従来のDDHを中心とした護衛隊群の艦隊防空の他に、周辺有事の状況変化(相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイルの発射実験など)に伴い、弾道ミサイル防衛(BMD)の役割も担うこととなります。実はこの二つの役割は迎撃高度、タイミングの差異から、同時対応、つまり両立が難しく、新たに艦隊防空の任務の分担を検討することが必要になってきます。
現在、実際にはこの役割は、イージス艦とコンビを組む汎用護衛艦に一部負担させるべく、汎用護衛艦の高性能化で対応することになっていますが、「亡国のイージス」では、「はたかぜ」級3番艦の「いそかぜ」に試験的に白羽の矢が立ち、この対策の一つとして、試験艦「あすか」で試験されてきた「ミニ・イージス・システム」を搭載し、それに関連する改装を行った、と言う設定になっています。
これに関連した記事(もちろん架空)が下のURLにあります。
http://www.masdf.com/news/isokaze.html
この、ミニ・イージス・システムの搭載に伴い、艦橋前に搭載されていたアスロック・ランチャーを16セルのVLSに換装し、従来から搭載されていた艦首のMK.13ミサイル発射基に加え発射即応性を高め、主砲も従来の54口径5インチ単装速射砲(Mk.42)から、オート・メララ製の54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)に変更し、対空能力の向上が図られました。
(直下の写真は、F-toys製「はたかぜ」をベースに改装された「いそかぜ」。「はたかぜ」の艦橋上部にDesktop Fleet 製のAsukaの艦橋上部のイージスシステムドームを追加。主砲を換装し、アスロックランチャーに換えて16セルのVLSを搭載しました。さらに艦番号を183に変更)
(艦橋上部に追加搭載されたイージスシステムドームと、換装した主砲、VLSのアップ。艦番号を変更)
「いそかぜ」という名前
ところで、本稿を読んでいただいているような方ならば、映画で「いそかぜ」が「こんごう」級 イージス護衛艦の姿で登場したことに若干の違和感を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
イージス護衛艦「こんごう」級は「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」と全て「山」の名前がつけられており、その後の「あたご」級でも、「あたご」「あしがら」と山の名前を命名することが踏襲されています。これは旧海軍の重巡洋艦、巡洋戦艦(後に高速戦艦)が「山」の名前を艦名としてことを踏襲しています。
元来、護衛艦はDDの分類符号からも、多くは駆逐艦に分類され、旧海軍の慣例に倣って(慣例かどうかはよく知りませんが、多分そうですよね)「つき」「なみ」「きり」「ゆき」「あめ」そして「かぜ」など気象関連の名前が付けられる事が、創設以来一般的でした。
その慣例は海上自衛隊初のヘリコプター搭載護衛艦「はるな」級の就役から変わって行きます。「はるな」級は「はるな」「ひえい」、続く「しらね」級では「しらね」「くらま」と、以降、大型艦には「山」の名前がつけられるようになります。前出のイージス護衛艦もこの系列にありますね。(さらに最近はさらに大型の全通甲板型のDDHには日本の律令制以来の旧国名が艦名として使われ始めています。「ひゅうが」級の「ひゅうが:日向」「いせ:伊勢」、「いずも」級の「いずも:出雲」「かが:加賀」という感じですね)
そうした意味では、「こんごう」級イージス護衛艦の形態を示す艦に「いそかぜ」と気象関連の名前を付けることには違和感を覚えずにはいられません。
では、護衛隊群の防空を担うイージス艦以前のミサイル護衛艦(DDG)にはどのような名前がつけられていたか、というと、その初代は「あまつかぜ」、第二世代「たちかぜ」級は「たちかぜ」「あさかぜ」「さわかぜ」、そして第三世代「はたかぜ」級は前出のように「はたかぜ」「しまかぜ」と、全て「かぜ」で統一されています。
従って、「はたかぜ」級の3番艦であれば、「いそかぜ」の名はふさわしい、と言うべきでしょう。
もう一つ、ついでに艦番号について。
艦隊防空を担うDDGは、「あまつかぜ」DDG-163、「たちかぜ」級3隻がDDG-168~170、「はたかぜ」級2隻がDDG-171, 172、続くイージス艦「こんこう」級の4隻がDDG-173~176、「あたご」級2隻はDDG-177,178、そして最新の「まや」級2隻がDDG-179,180と続きます。
艦隊防空、という視点で言えば、初代「あきづき」級の2隻も、そういう役割を負っていましたが、艦番号はDD-161,162でしたし、「あまつかぜ」と「たちかぜ」級の間の「たかつき」級4隻(DDA-164,165,166,167)も、新型の54口径5インチ単装速射砲(Mk.42)を2基搭載する対空能力に優れた艦でした。「こんごう」級の就役以前には、ターター・システム搭載のDDGとDDA「たかつき」級が護衛隊群の防空を担当するという時期がありました。
こうした観点で見れば、「空母いぶき」に登場した浮舟艦長の「いそかぜ」第二形態がDDG-161の艦番号を継承したことも、なんとなく納得ですね。
一方で「はたかぜ」級3番艦である「いそかぜ」第三形態が背負っているDDG-183は、現在、DDH「いずも」の番号になっていますが、当時はおそらく「いずも」級の計画前であり、この番号を付与された、と考えることもできるでしょう。
と、名前、艦番号にも選択や付与に一定の法則がありそうです。これもまた興味深い。
幻の「亡国のイージス」前日譚:Call the Role
余談ですが、長編小説「亡国のイージス」には、その姉妹編として、この改装にまつわる前日譚を描いた短編小説集があるのです。
その改装は非常に大規模で、約9ヶ月を要しました。更にその後の公試などで再就役までに、「いそかぜ」はほぼ1年を要しているのです。
その改装工事中には、前出の「いそかぜ」の仙石先任伍長 は、造船所とのやり取りに疲れ果て、完工後には艦橋上に現れた「芽の生えたタマネギ」のようなミニイージスシステムのドームを見て「おれの艦を、こんなに不細工に造り変えやがって」と憤慨し、更に彼自身の部署であったターター・システムがミニ・イージス・システムによって無用の長物化したことに、自分も時代遅れになったかのように寂しい思いをするのです。
さらに、艦長と副長以外ほとんどの幹部クルーが入れ替わり(実は、この異動は、その後のテロ実行に向け仕組まれたものだったのですが)、乗組員たちも入れ替わり、これから先の混乱を予想して、先任伍長はため息をつくのです。
・・・と言うような「亡国のイージス」前日談が、実は「Call The Role」という別冊小説になっています。この本は仙石先任伍長だけでなく、その他の主要な本編登場人物の前日譚の短編集というような趣の本になっています。(「Call The Role」というのは「点呼」というような意味合いだそうです)
この本、実はピットロード社製の「いそかぜ」のフィギュアとセットで販売されていたのですが、今や入手が非常に困難な「幻の本」となっています。
https://www.amazon.co.jp/原作版《いそかぜ》-精密フィギュアセット-福井-晴敏/dp/4062751518
フィギュアはさておき、本だけでも再版されればいいと思うのですが。できれば文庫本でね。
この本にはもう一つ、大変貴重な点があります。実はその後書き(?)がフィギュアを手掛けた模型メーカー「ピットロード」の企画開発部のお二人(そのうちの一人は原型製作者)によって書かれているのです。前述の「後書き」という言葉に?をつけたのは理由があって、後書きと言うよりも、「いそかぜ」のFRAMによる性能向上と意義を記述された内容になっています。大変コンパクトで面白い!
欲しくなってきたでしょう。再版してくれればいいのに。
おまけ?
さて、最後に直下の写真は、「はたかぜ」級ミサイル護衛艦のそろい踏み(?)。手前からDDG-172「しまかぜ」、DDG-171「はたかぜ」、DDG-183「いそかぜ」の順。
前出の「DDG-183」の記事www.masdf.comには、僚艦「うらかぜ」と共に第65護衛隊を編成、という記載があります(もちろん架空ですよ)。どうしようかな、「うらかぜ」も作ってみようかな。
しかし、同記事の中には「しかしこの近代改修工事は、いそかぜの場合で450億円と高額であるため財務省の片山さつき担当主計官は「近年の緊縮財政期においてこのような費用対効果が悪い計画に意味があるのか?ミニ・イージス戦艦なんて時代遅れよ!」と、今後の予算化には消極的。またアメリカ政府も日本の「ミニ・イージスシステム」開発に対して日本の軍事的独立を警戒し不快感を募らせており、今後順調に計画が進行するかどうかはまったく不透明である」という記載があり、その後さらにミニ・イージス化が進められたのかどうか。
つまり「うらかぜ」をミニ・イージス搭載艦形態で作るべきかどうか、はっきりしませんね。ちょっと困った。
・・・ああ、そうか、いいこと思いついた。両方作っちゃえ!
まあ、これも新たな楽しみ発見、ということで。
しかし、その後、原作等を読み返すと、「隊司令の衣笠一佐が、あえて旧型の第二世代ミサイル護衛艦「うらかぜ」を座乗艦に選んだのも・・」と言う記述があるではないですか。
ありゃリャ、これは「たちかぜ」級だぞ。と言うわけで、残った一隻は「うらかぜ」として制作することに・・・。
「うらかぜ」(DDG-162):架空護衛艦
(直下の写真:DDG-162: うらかぜ Amature Wargame Figures製 WNV素材モデル。写真を下記のようにアップにすると、やはりWNV素材の仕上がりの荒さが気になりますね。肉眼で見ている分には、それほど気にならないのですが)
細部は、武装の換装など、ほぼ「さわかぜ」と同じ仕様で仕上げてあります。最後に艦番号「162」を貼付して、出来上がり。
この艦番号、決定までに少し紆余曲折がありました。
と言うのも、「いそかぜ」については原作中に「183」と言う艦番号が明記されているのですが、「うらかぜ」については、艦番号に関する記述はありません(少なくとも、私が読みこんが限りでは。もしどこかに記載があったら、是非お知らせ下さい)
そこで、「たちかぜ」級の4番艦であれば、本来は艦番号「171」が付与されるべきなのですが、この番号は実際には、すでに次級「はたかぜ」級DDGのネームシップ「はたかぜ」に付与されています。その後はミサイル護衛艦の番号は最新型の「まや」級の「はぐろ」の「180」まで、すべていっぱいで、さらにその後は181から184までDDHの「ひゅうが」級、「いずも」級に付与されていて、空きがありません。(そう言う意味では小説版「亡国のイージス」の「いそかぜ」の183番も、実際にはDDH「いずも」の艦番号になってはいるのですが)
止むを得ず、「うらかぜ」の就役時点ではすでに退役していたであろう防空担当護衛艦の番号を、と言うことで、初代「あきづき」級の2番艦「てるづき」(1981年、特務艦籍に変更 この時点で、DD-162からASU-7012に艦番号を変更)の番号をいただいた、と言うわけです。「うらかぜ」の前の「たちかぜ」級3番艦の「さわかぜ」の就役が1983年ですので、少なくとも「うらかぜ」の就役はそれ以降と想定できますので、なんとか辻褄は合うかと。(余談ですが、前述の「いそかぜ」の項でも触れましたが、映画版「空母いぶき」の「いそかぜ」は初代「あきづき」の艦番号「161」をもらっています)
と言うことで、少し苦労しましたが、艦番号は「162」に決定。
第65護衛隊(「いそかぜ」(DDG-183), 「うらかぜ」(DDG-162))
(直下の写真は、第65護衛隊の2隻。手前:「うらかぜ」(DDG-162) と奥:ミニ・イージスシステム搭載艦に改装後の「いそかぜ」(DDG-183))
(直下の写真:参考までにターターシステムからイージスシステムへの換装後の「いそかぜ」(DDG-183)。「はたかぜ」級DDGをベースに、艦橋上部にミニ・イージスシステム用のドームを追加。主砲をオート・メララ製の54口径コンパット砲に換装、併せて、アスロック・ランチャー設置箇所に、16セルのVLSを設置して即応性を高めるなどの工夫があります)
おまけ第二弾
PC うみたか級駆潜艇(1959-1989同型艦 4隻)/PC みずとり級駆潜艇(1960-1989同型艦 8隻)
(「みずとり級」駆潜艇の概観:48mm in 1:1250 by Hai)
海上自衛隊は沿岸哨戒、港湾哨戒用の艦艇として「駆潜艇」の艦級を保有していました。「駆潜艇」の艦級としては、上記の2級以前に「かり級」「かもめ級」「はやぶさ」などが存在しました。いずれも400トン程度の大きさの船体を持ち、20ノット程度の速力を有していました。(「はやぶさ」のみやや小型で速力は26ノット)
兵装は40mm機関砲を主砲として、対ヘッジホッグや爆雷投射機、投射軌条を装備しています。
(「みずとり級」駆潜艇の主要兵装:40mm機関砲と艦橋前のヘッジホッグ(上段)と、艦尾部の爆雷投射兵装類。他ん魚雷発射管は未装備か?)
「うみたか級」「みずとり級」は第二世代とも言え、兵装として短魚雷発射管を装備しているところが特徴と言えます。
周辺諸国の潜水艦配備が原子力潜水艦装備に移行すると、「駆潜艇」的な装備では対応に不足が生じ、本来の対潜哨戒は「護衛艦」へ、水上沿岸哨戒は「ミサイル艇」等の高速艇に移管されて行くことになります。
余談ですが前出の「はやぶさ」の艦名は、現在では「ミサイル艇」に引き継がれています
(「うみどり級」駆潜艇(手前)と「はやぶさ級」ミサイル艇(奥)の艦型比較の概観)
(「はやぶさ級」ミサイル艇の概観:43mm in 1:1250 by F-toys:本級のモデルはF-toysの「現用艦船キットコレクションの一部のおまけとして同梱されています)
沿岸警備用の現役高速艇です。
200トンの線型を持ち、76mm単装速射砲と90式SSM(艦対艦ミサイル)連装発射機を2基搭載しています。主機をガスタービンとしてウォータジェットポンプを推進機として44ノットの高速を発揮できます。
(「はやぶさ級」ミサイル艇の主要兵装:ステルス性に配慮した設計の76mm速射砲(上段)と日本版「ハープーン」というべき90式SMSを搭載しています(下段))
2002年から6隻が配備されています。2021年から順次退役し、新型の護衛艦と建造中の「哨戒艦」(どんな船だろう?)に現在の任務を引き継ぐ予定です。
(「はやぶさ級」ミサイル艇の勢揃い、というタイトルをつけるには、ああ、一隻足りない。残念!)
一方で「はやぶさ級」はフィリピンとの防衛協力でのフィリピン側からの貸与希望装備のリストにあげらているとの情報もあります。南シナ海に火種を抱えるフィリピン海軍としては、高速・高性能の本級は欲しい装備でしょうね。
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